11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 06:48:03.77 ID:DL0z8tZuo
自動販売機で買った缶のココアにかじかむ手を温めていると、笑いがこみ上げてきた。
ただ、傘を返そうというだけで、私はなにをしているんだろう。
ようやく少女と彼がラジオ局から姿を現したとき、空は藍と紫の絵の具を混ぜ合う水のようだった。
私は空き缶をゴミ箱に放ると彼の元へ走り寄った。
「あの、すみません」
「は、はいっ」
先に振り返ったのは少女の方だった。
秋らしい落ち着いた色合いのスカートとジャケットに、
ハンチング帽を目深に被る下へ丸っこい目がきょろりと動いている。
どことなく垢抜けない風貌が却って彼女を可愛らしく見せた。
「あ、いえ……その、男性の方……」
「僕?」
彼は自分のことを指さして、言った。
「はい。あの、喫茶店で、傘を借りた……」
「ああ、佐久間まゆさん」
彼はポンと手を打って、にこりと笑った。
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