過去ログ - 【モバマス】「橘ありすの十四日間戦争」【橘ありす×市原仁奈】
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14:名無しNIPPER[saga]
2014/12/24(水) 22:55:48.24 ID:YqYwLBdl0
「……立派だったよ。桃華のこと、思い出した」

 プロデューサーの車の助手席で、私はあたたかなココアを飲んでいます。

 サイドミラーにぼんやりとうつる私の目は赤く、鼻をこすると、ぐしゅっと音がしました。

「他の女の子の話なんて、しないでください」

 肩をすくめたプロデューサーが、身を乗り出し、私の目を覗き込んできます。

「……そうだな、悪かった。綺麗だったよ、ありす。歌、うまくなったな」

 プロデューサーにされたみたいに、ぷいと顔を背けます。

「仁奈さんと一緒じゃ、なかったんですか」

「ご両親が駅まで迎えに来てくれて、そこまで送ったんだ。もう機嫌を直したから、安心していい」

 こういう言い回しをするのは、私の口から話を聞きたいからでしょう。

 責めも、怒りも、しないんですね。

 毎度ながら……ずるい人です。

「仁奈さんには、私から謝ります。馬鹿なことをしました」

 途端にプロデューサーが笑みを浮かべたものですから、すべてが彼の手の内って感じで、なんだか腹が立ちます。

「ですが、私はあの子が苦手です。おかしな格好でレッスンに来ますし……向こうも、私のことが気に食わないみたいです」

「ありすのバリアは分厚いからな。自分から外してやらないと、誰も近寄れない」

「バリア? なに、幼稚なこと言ってるんです。学校の子たちと同レベルじゃないですか」

 プロデューサーが微笑みを濃くして、私の頭をなでようとしたので、セクハラですと払い飛ばしてやりました。

「別に全面的に受け入れてやれとは言わないさ。だが、仁奈のことを知る努力をしてやれよ。素直な子だから、向けた感情を倍ぐらいにして返してくれる」

「優しくするべきだと?」

「ありすは他人に対して厳しすぎる。自分に対してもな」

「別にそんな自覚はありませんが」

「騙されたと思ってやってみろ。そのうち意味が分かる。断言するが、ありすの抱える問題はそれだけですべて解決するよ」

「だといいですね」

 ぶすっと膨れて、私はココアを飲み干しました。

 コンビニの袋からマジックを取り出して、左手に六本目の線を付け加えます。

 その線と、プロデューサーの横顔とを見比べて、私はひそかに微笑みました。


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