過去ログ - 奉太郎「守りたいもの」
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7: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:10:01.88 ID:bTDiL5Hz0

 新刊の期待もほどほどに、平積みされた本の山に視線を通していく。店内にはポップや店員からのおすすめ紹介などがひしめいていて、実に自己主張の強い場となっていた。
 躍る惹句は「春休みの読書感想文にどうぞ! 名作文庫フェア」を筆頭に、学生の長期休暇にちなんだものばかりだ。

 他に目につくのは映画化の紹介や万引き防止を促す張り紙。しかし俺が見たいのはそれではなく、今月の新刊一覧である。
 結果から言えば、今月は俺の購読している漫画は、新刊が出ないようだった。とはいえすぐに帰るのも何なので、少し店内を散策する。

 小説、漫画、雑誌。たまに誰が買うのだか見当もつかないものがある。マッチ棒造形の専門誌などはどのような層に売れるのだろうか。
 里志のような人種が何人もいるのだとすると、外の世界はあまりにも広いのかもしれない。

 五分ほどそうして、出入り口へと足を向ける。一週間後くらいにまた来てみようか。
 と、入り口の自動ドア、その影に落ちている何かに気がついた。携帯電話である。

 しゃがんで手に取れば、確かにそうだ。蛍光灯を鈍く反射するメタリックシルバーで、スライド式の携帯電話。麻雀牌の『西』がストラップでついている。なぜこんなものがここにあるのだろうか。



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