過去ログ - モバP「久々に留美さんとお出かけ」
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8: ◆agif0ROmyg[saga]
2014/12/30(火) 22:24:55.18 ID:j/XtsJ1V0
 滝のような雨が降る中、這々の体で俺たちは家に戻った。

 お互いにコートを着ていたので全身びしょ濡れ、とまではいかなかったが、冷たい雨で体の芯まで冷えている。

 バスタオルで簡単に水気を取り、暖房を入れて手足を温めて、ようやく人心地ついた。

「ふう……やっと落ち着きましたね」

「そうね。でも、ごめんなさい、急に押しかけちゃって」

「いえ、いいんですよ。留美さんが風邪でも引いたりしたらまずいですからね」

「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいわ」

 余り長居させるのも良くないかもしれないが、まだ雨の勢いは強い。

 いつの間にか雨に雹も混ざり始めていて、ばらばらと屋根が鳴っている。

 窓から外を見てみると、水で煙って遠くが見えない。

 狭い部屋の中、俺達二人きりでいることを嫌でも感じさせられてしまう。

「……? どうしたの」

「いえ、なんでもないです」

 温風で暖められて、留美さんの生白い肌は瑞々しい。

 しっとりと濡れた黒髪が艶かしい。白シャツはまだ濡れて、下着の形すら浮き上がらせている。
 
 髪が一房張り付いた項はまるで風呂あがりのそれのようで、なんだか留美さんのプライベートを覗き見ているような感覚を覚える。

 俺が見出して育て上げたアイドル、そのアイドルと二人きり、同じ部屋にいるという奇妙な焦燥感。

 ざあざあという雨の音で、まるで世界に俺と留美さんしかいなくなってしまったかのような不思議な感覚を覚える。

 張り詰めた雰囲気に耐えられず、お茶でも入れてやろうと部屋を出ようとした時、背後でぽすんという音がした。

「え……?」
「ねえ……この部屋、まだちょっと寒くないかしら。
 もっと暖めてくれない? 機械じゃなくて、あなたで」

 ベッドに腰掛けて軽く両腕を開いて、留美さんがこっちを見ている。

 潤んだ瞳が強く脆い視線を投げかける。

 思わず唾を飲み込む。

 真面目だけれどどこか不器用で、放っておけない雰囲気の26歳から今まさに誘惑されているという事実を、すぐには認識できない。

 よく見ると、留美さんの手も僅かに震えている。

 覚束ない手つきで、シャツの胸元のボタンを開けた。

 目をすっと細めて、緊張を隠すようにやや早口で言う。

「ねえ……分かるでしょ。分かってよ。
 あなたじゃないとダメなの。他の人ならもっと上手くやるのかもしれないけれど、私には……」

 ふらふらと彼女の元へ歩み寄る。

 なよやかな肩に手を伸ばす。

 俺の中に残った職業意識がその手を押し留める。

「留美、さん……! あなた、自分が何言ってるのか……」

「分かってるわよ。でも」

 留美さんの指が俺の指に絡みつく。

 軽く力を込められただけで、もう振りほどけない。

「私、こんな気持ちになったの、あなたが初めてなの。だからもういっぱいいっぱいで……
 こんな女は、キライ? もっと余裕のある女じゃないとダメかしら」


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