過去ログ - 橙子「年末だな。式」
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6:名無しNIPPER[sage]
2014/12/31(水) 20:24:15.97 ID:KvG+T8iK0

どうやらこちらの意図を察してくれたらしい。黒桐だったらもうちょっと付き合ってやっただろう。アイツは誰に対しても虫がよすぎるんだ。

「だからな、ここの事務所の名前は『伽藍の堂』だぞ。こんなにも年末を迎えるのにふさわしい場所はないと思わないのか?」

「橙子、俺お前と一緒に年越すなんて絶対嫌だからな」

「なんだ。乗ってくれたっていいじゃないかたまには。……黒桐にもたまには自分の時間を与えてやれ。あいつだってお前にかかりきりというわけにもいかんだろう」

「……嫌なものは嫌なんだ」

……そうだ。嫌なものは嫌なんだ。アイツの都合だってあるけど嫌なんだ。

「……仕方ない。じゃあ私はここらで撤退するとしよう」

橙子は椅子から立ち上がり、大して片付けていない書類の山をゴミ箱に投げ込んだ。

ああ、これでまた私は今日どこで過ごすか考えなきゃいけないのか。

自室に戻ってもいいがあそこは味気なさ過ぎる。

「ああ、そうだ。式。どうせだ。今日はここの使用権のお前に引き渡そう。どうせ行くあても無いだろう。警備でもしておいてくれ」

そういうと橙子はオレンジ色のコートのポケットから事務所の鍵を抜き取ると私の方へと投げた。

ちゃりんと小さな金属音が鳴り私の傍に落ちた。

「じゃあね。式。良いお年を」

それだけいうと橙子は事務所から出て行った。

カツカツと橙子が階段を下りていく音が響いていく。

「何が良いお年を、だ」

私は起き上がり、床に落ちた鍵を拾い少し前に知り合った人物を思い出した。

鍵を見るまで忘れていた記憶の中にいた奴の事を。

再びソファへ横になり、掌の中の鍵を見つめた。

私はそれを機に物心ついたときから今までの事を振り返りながら、意識が許す限り物思いにふけり続けた。

私は部屋に漂うヤニの臭いに不快感を覚えながら、瞼を閉じ記憶を掘り起こす。

――窓の外は雪が強くなっていた。


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