過去ログ - 【モバマス】モバP「茄子と姫始めだと……?」【R-18】
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5:名無しNIPPER[saga]
2015/01/01(木) 00:03:32.23 ID:iHnmkKvlo

●03

『プロデューサーさん。今まで、ずっと言えませんでしたけど……
 ここまで来たからには、言わせていただきます。
 私は――鷹富士茄子は――あなたのことが大好きです』

俺が茄子に告白されたのは、芸能界の栄華をきわめた頃だった。

『俺、茄子のこと好きだよ。でも、俺は仕事があるから、茄子とそういう付き合いはできない』

この調子に乗った返事は、本音だった。
当時の俺は、遠からず日本のアイドル市場を制圧して、世界に挑もうとか夢想してた。



『なら……私が、アイドルとしての立場を引き替えにしても、
 プロデューサーさんと一緒になりたい、と言ったら、どうします?』
『……そこまで本気か、茄子』

茄子の思いは、俺が思うより深かった。男としては飛び上がるほど嬉しかった。
同時に、自分の目が節穴だったと思い知らされ、プロデューサーとしては耳に痛くもあった。
俺の器では、アイドル・鷹富士茄子を御しきれない、という宣告でもあった。



『俺はやめておけよ、茄子。俺は、死ぬほどアイドルのプロデュースが楽しいから。
 茄子には、寂しい思いばかりさせる。それは、俺も辛い』

茄子への好意と、プロデューサーとしての野心を天秤にかけて、俺は後者をとった。
当時の俺は成功に酔いまくってて、自分を才能に溢れた人間だと思いあがっていた。
自分の名声を世界に轟かせて、実力を見せつけてやろうと夢想していた。

プロデューサーに徹するなら、惚れられた強みを生かして茄子を宥めすかし、
もう少しアイドルとして稼いでもらう……ぐらい考えるものだが、それはできなかった。
茄子を何とも思ってなかったら、それができたのに。



『未練ですか、プロデューサーさん』

茄子は俺の内心を見透かして、俺がプロデューサーとして張った意地を破りにきた。

『プロデューサーさん。これから私が言うことは、
 あなたと私の信頼関係のためにご承知いただくことです。よく聞いてください』

茄子は、妙な口上を言い出した。

『プロデューサーさんが、これから仕事で他の誰よりも大きなお金や名声を得るとしても、
 ……私が本気で望めば、あなたは必ず仕事より私を選びます』

茄子は自信に満ち溢れたセリフを、なぜか痛ましそうに告げた。

『ですから、もしプロデューサーさんが私より仕事をとるなら、今ここで私に言ってください。
“お前にはもう興味が無い。明日から、二度と会うことがなくても構わない”と』



『そう突き放してくれなければ……私は、あなたを奪ってしまうでしょう』



俺が茄子の真意を理解するのに、一年かかった。
その一年間、俺は自分ですら想像しなかったほど多く稼いだ。
でき過ぎなぐらいの幸運に恵まれ、どんな無茶な仕事でも全て成功を収めた。
茄子の予言通り、俺は“仕事で他の誰よりも大きなお金や名声を得”た。

だが俺は、仕事が心底嫌になった。
何をどうやっても“幸運”のせいで成功するからだ。
俺が“才能を見せつけてやろう”と思って仕事に没頭していたことを、茄子は見透かしていた。

お金? ヘリコプターで空から諭吉をばらまけるぐらいあるが、使うヒマはない。
名声? “才能”に羨望されるならまだしも“幸運”に嫉妬されるのは苦痛だ。
アイドルの成長を見る喜び? それで一番に思い浮かんだのは、茄子の姿だ。

何が“死ぬほどアイドルのプロデュースが楽しい”だったんだか。

俺は茄子に参ってしまった。


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