過去ログ - バゼット「――私も、貴方の家族にしてください、士郎君」
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8: ◆bU0CD2Homw[sage]
2015/01/03(土) 09:11:04.78 ID:H7PKXE/v0


「……失礼、少し言い過ぎました。ところで、ここまでの足はどのように確保したのでしょうか」


「普通に電話一本で来てもらったわ。自分で運転しようかと思ったけど、運転手を一人で教会に待たせておくのも悪いと思ったから」


「……え?」


 ぽかんと口を開けて、まじまじとカレンを見る。


「ええと、免許はいつ取ったのでしょうか」


「移動する機会が多いから、いっそ自分で運転した方が楽かと思って」


 あと、徒歩での移動はあまり得意ではないし、と小さく付け足すカレン。


 ……言われてみれば、歩行能力に障害のある彼女には、車はほぼ必須だ。

 
「というか、18歳以上であることに私は驚きを隠せないでいます」


「……それは侮辱と受け取っていいのかしら?」


「滅相もない。――車ですか。それは有り難い。どうか、この荷物だけでも乗せていってもらえると助かるのですが」


「? 何を言っているのバゼット。貴女一人くらい乗るスペースはあるけど、そんなに私の運転は信用ならない?」


 不愉快、というよりは拗ねているような、不機嫌な声色。

 一部のサディスティックな言動から勘違いしがちだが、彼女とて立派な修道女である。

 困っている人間をからかいはしても、それでそのまま放っておくような真似をするはずがない。


 ……これは、失敗した。


 そもそも、車で迎えに来ておいて、荷物だけ受け取って帰るような性根のねじ曲がった人間などいるわけがない。

 舌戦の仕返しとばかりに意地悪をされるものと思い、先に下手に出たのだが、どうやら逆効果だったようだ。

 全くもって申し訳ないことをした。


「あ……い、いえ。そんなことは、一切ありませんが」


「そう。じゃあ決まりね」


 そう言い残し、カレンはくるりと踵を返して歩き出した。

 山のような荷物を手早く抱えようとすると、


「ああ、貴女はそこで待っていて。私が車をここまで回すから」


「これはどうもご丁寧に。感謝します、カレン」


「どういたしまして。でもいいのよ、好きでやってることだから」


 ふっと、小さく笑って去っていくカレン。

 その後姿は、紛れもなく聖女のそれだった。




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