過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part2
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780:名無しNIPPER
2015/05/02(土) 02:28:40.83 ID:WelRXyL80

>>777「雪女と夏祭り」


「わたあめみたいだ」

確かそんな一言から出た話だったと思う。
彼女に夏祭りの存在を教えたのは、子供ながらに残酷だったかもしれない。

わたあめって何?

雪みたいなふわふわしたやつで、甘くておいしいやつ。

彼女はわたあめに興味を持った。
僕自身わたあめなんて高級な食べ物(と、当時は思っていた)は滅多な事がないと食べられなかったから、実際にここに持ってきて「はい、どーぞ」という訳にもいかなかった。
第一、祭り以外の場所で見た事がなかった。

それでも彼女は食い下がった。
普段は僕よりお姉さんな彼女のわがままを久々に聞いた。

わたあめ、食べてみたいなぁ。

オマツリならあるんだけどね、おっちゃんが作ってるやつ。

オマツリかぁ、オマツリ行ってみたいなぁ。

夏んなんないとダメだよ、オマツリは夏にあるんだ。提灯とか店とかは夏んなるとあの神社のとこに出てくるんだ。

ふぅん……残念……

僕たちの住んでいた所はそれはもう絵に描いたような田舎で、遊びは自然と戯れる事、友達と外で駆ける事。
オマツリは夢の国に等しかった。
統計的に夢の国は夏にならないと出現しなかったので、僕にとってわたあめは夏の食べ物だった。
彼女に食べさせるのは、無理だ。季節的に。

食べたい……たーべーたーいーなーわたあめぇー。甘い雪ー。

彼女はもうちょっと拗ねはじめている。
雪を口に含んでさりさり舌でこねていた。
僕も真似してやってみたが、これはダメだ、食感も味もわたあめには程遠い。
雪みたいなやつ、という表現は間違っていたかもしれない。
冷たさで歯がきしきしと鳴った。

ねー何でオマツリは夏なの?

分かんない。暑いからじゃない。

えー寒くてもいいじゃんオマツリー。やろうよー。

実際冬にあるオマツリも大人になってたくさん知ったが、如何せん当時の住処は辺鄙なところだった。
オマツリには熱気と提灯と浴衣と、なんか夏っぽいものたちがつきものなのだ。


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