過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part2
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名無しNIPPER
2015/05/02(土) 03:14:02.13 ID:WelRXyL80
彼女が創り出した雪もお昼に日が昇るころには溶けて消えて、僕は周りを見渡して初めて春になったのに気づいたのだった。
不思議と涙は出なかったけれど、放心したようにふらふらと、僕はどうにか家に帰った。
『ダメって言ったら大人になるまで待ってね』
ああ、そう言えばそんな事も言ったっけ。
汗ばんだ手にはひとかけの雪と、最後に彼女と交わした何でもない約束が握られていた。
そして僕は、それをいつまでも忘れられないでいるのだった。
毎年冬になると実家に帰って、綿菓子をふたつ買って「昨日」のの場所へ行く。
一本を地面にさして、もう一本を口いっぱいに頬張って、すっかりおじさんになった僕はそこで夏祭りをするのだ。
すっかり甘いものが苦手になってしまった僕は、それでも丸々一本喰いつくして、また来年、と彼女に手を振る。
『そんなに待てない』
ふとそんな言葉が思い出されて僕は苦笑した。
ごめんね、と言って、後は一度も振り返らずに実家の門に入る。
次の日には、綺麗に綿菓子はなくなっていた。
これも、毎年の事だった。
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