過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part2
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837:名無しNIPPER
2015/05/18(月) 23:21:55.24 ID:1PSjP5Ito
>>740「おも胃」

三月に中学を卒業した。
春休みで暇をもてあそんでいた俺に一通のメールが届いた。
差出人は不明。
なんとは無しにタイトルを読んだ。

『おも胃ディストラクションをありがトゥ!』

なんなんだよ。
いや……なんだ? なんだって言うんだ。
記憶にねーよ。おも胃ディストラクションってなに?
お礼されるのが逆に怖いよ。

そしてなんでテンション高めなんだよ。
意味がわからねーよ。
チクショウ、これが社会の洗礼ってやつか?
こういうのに耐える勇気を持てってことなのか……。

見えない恐怖に震えている俺。
そんな時、急に電話がかかってきた。

『あ、せんぱーい。おヒサですネ』

聞きなれはするがイラつくその声は、部活の後輩の南だった。
なんなんだよ、と聞き返す俺。南は、

『メール届きましたぁ?』

淡々とした口調で言ってくる。
メール? と疑問符をつけて俺は返事をした。

『そうそう。部活のみんなで、寂しい寂しい春休みを送る先輩に、
 せめてもの情け的な応援メールを送ろうって話になりまして。
 思い出をありがとうって』

大きなお世話だこの野郎、ぶち転がすぞ。
そんな文句を平然と聞き流しながら南は続ける。

『冴木ちゃんのスマホ借りたんですけどね、予測変換ってオモロイですね。
 あんまりオモロイんで意味不明なまま送ったんですけど、どうでしたぁ?
 クールな冴木ちゃんの意外な一面! って感じでオモロかったでしょ?』

冴木のスマホからだったのかよ。
俺あいつの情報登録してなかったわ。
何の気なしにそう答えると、とたんに南の態度は一変した。

『はぁ!? サイテー! なんで登録してないですか!?』

な、なんでって言われても。
逆になんでお前はそんなに怒ってるんだ?

『ウチのお膳立てがイロイロと台無しじゃないですかこの無能!
 え゛!? あの冴木ちゃんにこんな一面が!! って感じで
 ギャップ萌えが生まれる前提だったのに! ほんと使えネー先輩ですネ!』

誰が無能だテメーこんどあったら三発殴るからな。
一発じゃないぞ、三発だ。
きっちりとそう告げてから俺は電話を切った。
そしてムカつく後輩である南のことをさて置き、同じく後輩である冴木のことを思う。

ショートカットで、いつも憮然とした顔をしていた。
クールで、無感動で、そのクセ俺にだけはつっかかってくる女。
そして「思い出をありがとう」を「おも胃ディストラクションをありがトゥ!」と誤変換するスマホの持ち主だ。
あいつ普段なにを検索してんだ? リアルに怖いわ。

呟いた声に応えるものは無く、辺りにはただ春の陽気が満ちている。
まあいい、あの二人に悩まされる事はもう無いだろう……。
そんな風に考えていた俺が後悔を覚えるのは、もう少し先になってからの話である。
しかしその事を知らない今、俺はただ暢気に時を過ごすのだった。


続かない


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