過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part2
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948:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/13(土) 07:45:56.75 ID:F70eNYrvo
>>940「雪時計」

振り返るとそこに君が見えた。
君は俺に気付くと、小走りになってこちらに向かって来る。
午前9時5分前。俺は時計台の前に立って君を待つ。
白い雪が降る中、走る君の頬が少し上気して見えた。

――だが男だ。

ごめんね、待った? と息を切らせながら君が言う。
俺は「いやそんなに」と適当な相槌を打つ。
そんな俺からの返事を聞いた後、君は、はにかんだ笑みを浮かべた。
雪景色の下で君の笑顔は花のように輝いて見えた。

――しかし男だ。

映画が始まるまではあと30分近くあった。
そんな事を考えていると、君は俺の後ろにある時計台を見上げて言う。
「ほら見て、あれ、まるで雪の時計だよ」
はしゃぐ君の声。それは寒い朝に聞いた小雀の鳴き声のように涼やかに響いた。

――だけどやっぱり男だ。

ふっ、と吐いた溜息は冷えて白い気体となってすぐに消えた。
そして俺達は映画館へと歩き出す。
<巨大ワニ出現! 地球最後の日>を見るために。
もうすぐクリスマスだな、という考えが浮かび、それは俺を一層惨めな気分にさせるのだった。


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