12: ◆g/ChnI.qIuu2[saga]
2015/01/06(火) 18:22:37.74 ID:0v+4uQkno
 「お前、なんの用だ?」 
  
 「…」 
  
 答えることなく唐突に剣を振るう。 
13: ◆g/ChnI.qIuu2[saga]
2015/01/06(火) 18:23:37.28 ID:0v+4uQkno
 バンッ 
  
 最奥の部屋の扉を開ける。 
 慌てた様子の醜く太った半裸の男と、表情を失った、一糸纏わぬ少女。 
 抜け殻となったような少女をみて、少年は遅すぎた事を悟った。 
14: ◆g/ChnI.qIuu2[saga]
2015/01/06(火) 18:24:27.18 ID:0v+4uQkno
 「なんだお前は!?」 
  
 男の問いには答えない。 
 いや、その声は少年に届いてすらいなかった。 
 男は少年が剣を持っていることに気づいた。 
15: ◆g/ChnI.qIuu2[saga]
2015/01/06(火) 18:25:20.33 ID:0v+4uQkno
 少年を見た少女は、壊されてしまった魂で微笑んだ。 
  
 そして一言 
  
 「私を…殺して…」 
16: ◆g/ChnI.qIuu2[saga]
2015/01/06(火) 18:26:07.74 ID:0v+4uQkno
 剣を引きずりながら、ゆっくりと少女に歩み寄る。 
 少女の前に立った少年が剣を持ち上げる。 
 少女は、もう一度微笑んだ。 
  
 「うわああああ!!!」 
17: ◆g/ChnI.qIuu2[saga]
2015/01/06(火) 18:27:15.01 ID:0v+4uQkno
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 
 金持ちの家をあとにした少年は、泣くことをも忘れていたことに気づく。 
 地獄のようなこの暮らし 
 この世の不平等さ 
 そして、救うことの出来なかった少女 
18: ◆g/ChnI.qIuu2[saga]
2015/01/06(火) 18:27:59.88 ID:0v+4uQkno
 続いて思い出したのは空腹感。 
 空腹は、自分が生きていることの証でもある。 
 もはや空腹も感じなくなっていた少年にとって、その感覚はひどく懐かしく感じられた。 
19: ◆g/ChnI.qIuu2[saga]
2015/01/06(火) 18:29:00.96 ID:0v+4uQkno
 その刹那、少年は痛みを覚え、倒れ込む。 
 屋敷の追手にやられたのか、心の痛みなのか、それとも他の原因か、はっきりとはしない。 
 だがそれでも構わなかった。 
  
 ただ、ありのままの痛みを確かに感じていた。 
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