179: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:48:23.93 ID:ciDAKPAlo
ずっとずっと忘れられずにいる『人』がいる。
彼はとっても優しい声で私のことを「陽子さん」と呼んでくれた。
180: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:48:57.14 ID:ciDAKPAlo
私が夢を見なくなったのはいつからだろう。
小さいころから動物が好きで、いつかきっと犬や猫などの動物たちと話せるようになると信じていた。
181: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:49:27.03 ID:ciDAKPAlo
そもそも人付き合いの苦手な私は中学生になると勉強にのめりこんでいった。
友人も少なく、本当に心が許せる相手というものはほとんどいない私であったが、
夢に向かって頑張るということは私に幸福をもたらしてくれた。
182: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:50:04.44 ID:ciDAKPAlo
「ねえ、陽子ちゃん。やっぱり獣医目指してるの?」
「うん。小さい頃からの夢だったから」
183: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:50:31.97 ID:ciDAKPAlo
「ふふふ」
「あ、笑った!里香の嘘つき!」
184: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:51:04.98 ID:ciDAKPAlo
私は昔、気分転換に町はずれの神社によく通っていた。
ここは神主の方が犬を飼っており、私は昔からその犬と遊ばさせてもらっていたのだ。
名前はシロという。
185: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:51:48.18 ID:ciDAKPAlo
もう老犬にもなろうかという柴犬だったのだが、とても元気な犬だった。
大人しく、しっかりと躾けられているのかとても利口で近所の子供たちにも良く可愛がられていた。
186: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:52:14.67 ID:ciDAKPAlo
結局高校の間も勉強の虫だった私は成績もよく、希望する大学へ入ることができた。
大学では少しは社交性を身に着けようと部活やサークルに入ることも考えたのだが、
187: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:52:40.34 ID:ciDAKPAlo
なんで私は小さい頃の夢だというだけでこんなに頑張らないといけないのか。
それが最近わからなくなってしまった。
だからこそ私は大学の長期休暇を利用し、地元に帰ってきたのだ。
188: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:53:14.68 ID:ciDAKPAlo
考えてみればここ数か月、まともに笑っていなかったように思う。
バイトでは接客業なのもあって笑顔を作ってはいたが、それはあくまで「笑っている」とは言えない行為だった。
このことだけでも地元に帰ってきて良かったのだと実感できた。
189: ◆/5u1xsuUH.
2015/04/23(木) 22:54:08.63 ID:ciDAKPAlo
やがて神社に着き、境内までの階段を登る。
階段を登っている最中にワンワンという高い鳴き声が聞こえてくる。
こらえきれず私は駆け上がる。
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