過去ログ - ペンション・ソルリマールの日報
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3:名無しNIPPER[sage]
2015/01/10(土) 21:54:53.16 ID:2i7hE443o


UC0081年12月1日



 その日、私は昼前には島の空港にいた。アヤがお客さんを連れて近くの島まで船を出しているから、というのが表立った理由ではあったけど、

まぁ、私としては半年前からずっとメッセージのやりとりをしていたし、今更アヤの代わりに、だなんて思えないというのが正直なところだ。

 到着ロビーのソファーに座って天井の電光掲示板を眺める。ついさっき、待っていた飛行機の案内表示が“到着済み”へと切り替わった。

多分、そろそろ出てくるはずだ。

 そう思って、私はボーディングブリッジから伸びてきている廊下に目を向ける。そこからは、たくさんの観光客らしい人たちが思い思いの様子で出てきていた。

戦争が終わって、もうすぐ一年経つ。この島への観光客は日を追うごとにその数を増やしているように感じられた。

この調子が続くのならペンションの方も運営は明るいし、それに、これから仕事を始めるんだという“彼女”も、ことをうまく運びやすいんじゃないかな。

 ふと、観光客の中に知った顔を見つけた。いた!私はソファーから立ち上がって彼女に向けて大きく手を振る。

彼女の方も私を見つけてくれたようで、軽く手を振り返しながらこっちへと歩み寄ってきた。

 アヤと同じくらいの身長に、引き締まった体。長い髪を後ろで束ねている、美人さん。カレン・ハガード。それが、彼女の名だ。

「カレン、久しぶり!」

私はそう彼女を出迎える。カレンは照れくさそうな表情で笑いながら

「なんだかこう、改めて会うとなると、くすぐったいね」

なんて言って肩をすくめている。

 こんなところは、アヤに似ている、なんて本人達の前で言うと必死になって否定するから面白い。

カレンは、自分はアヤとは正反対だ、なんて言うし、アヤはアヤで、カレンとはソリが合わないんだ、なんて口では言うけど、

私にしてみたら、これほどお似合いのコンビはいないんじゃないかって感じてしまう。

特に、アヤのカレンへの信頼の強さと言ったら、羨ましいを通り越してちょっとした嫉妬のような気持ちを沸き上がらせるくらいほどだ。

まぁ、そうは言っても、私自信もこのアヤの軍時代の相棒をアヤと同じくらい信用して、そしてたぶん、好きなんだろうと感じていた。

 「そう?私は会えて嬉しいけど」

私がそう言ってあげたら、カレンはペシっと私の肩口を控えめにはたいて

「からかわないでよ」

なんて言ってそっぽを向いた。ふふ、ホント、アヤみたい。

 カレンは先月の末日付けで軍を退役してきた。

戦争のために膨れ上がった兵士を早期退職させるプログラムを進めているらしい連邦軍部が、退職金を結構な額で上乗せしてくれるんだと、いつだかのメッセージで教えてくれていた。

カレンはこれからこの島で自分の会社を立ち上げる準備に入る。住むところや事務所を決めるまでの間は、ペンションで寝起きすることに決めていた。

私はそのことが嬉しくて、二週間前から今日を指折り数えていたくらいだ。
 


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