4: ◆EhtsT9zeko[sage saga]
2015/01/10(土) 21:55:59.36 ID:2i7hE443o
「しかし、ここは相変わらず眩しいね」
車に乗り込んで駐車場を出たカレンが助手席で目を細めながらそんなことを言っている。
「ジャブローはいつも曇ってたもんね」
「そうそう。それに私たちはそもそもがモグラ暮らしだったから、太陽の下ってのは、眩しいよ」
カレンはそう言いながら膝の上に置いていたハンドバッグからサングラスを取り出して掛ける。私も車を運転するときはなるべく掛けるようにしていた。
それくらい、ここの日差しはとにかく明るい。まるで、アヤの笑顔そのまま、だ。
市街地を抜けて港へと続く道を走り、車はペンションにたどり着いた。ガレージに車を戻して、カレンをペンションの中に案内する。
ホールに入ると、ソフィアがモップで床を拭いてくれているところだった。
「あぁ、レナさん。おかえりなさい」
あれからソフィアも随分と明るくなった。
未だに夜な夜なジャブローでの夢を見て飛び起きることもあって、その都度、私かアヤが一緒に居てあげて背中をさすったり、
落ち着くまでおしゃべりの相手をしてあげている。
最初の頃は気を使ってか謝ってばかりだったソフィアも、最近ではようやく安心して身も心も私達を信頼して預けてくれているのが感じられていた。
「ただいま、ソフィア」
私はソフィアにそう返して、それからカレンをホールに招き入れる。
「ソフィア、久しぶり」
「お久しぶりです、カレンさん!」
二人がそう言葉を交わすのを見守ってからカレンにはソファーを勧めて、キッチンへコーヒーを入れに行く。
南米産の豆で入れたコーヒーをポットに入れてカップと一緒に持っていくと、カレンはソフィアと和やかに話し込んでいるところだった。
「はい、召し上がれ」
「あぁ、ありがとう」
「荷物、部屋に持って行くね」
コーヒーをテーブルに置き、そのままカレンのトランクを引っ張っていこうとしたら、カレンに掴まえられた。
「良いって。私はお客じゃないんでしょ?」
「そんなことないよ、大事なお客さん」
「なら、金をちゃんと取る?」
私の言葉に、カレンはこっちの顔色を伺うような不敵な笑みを浮かべて言い返してきた。
今回のペンション滞在については、食費以外は取らないよ、と事前に言い聞かせてある。
カレンはそれについては、部屋を借りるんだからその分は出す、とひとしきり私とアヤに主張していたけれど、私達はそれを断固として受け入れなかった。
結局、カレンの方が折れてくれて、それじゃぁ、お言葉に甘えるよ、って言葉を何とか引き出すことができた。
だから、確かに。そうだね。お客さん、って言うのは、ちょっと違ったかな。
「お客さん、じゃなかったか」
私がそう答えたら、カレンは満足そうに笑って
「そういうこと。お互い、気を使うのはやめようよ。私も自由にやらせてもらうからさ」
なんて言ってくれる。
アヤの誕生日会のときはたった二日間の滞在で、それ以後はメッセージのやり取りだけで、いざこうして面と向かうとやっぱりいろいろしてあげたくなってしまう。
だけど、カレンはそういうことを望んでなんていないんだ、ってのが、話していて感じられた。
カレンから伝わってくるのは、もっと大切で、もっと嬉しくなってしまうような、そんな気持ちだった。
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