49: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/03/17(火) 02:30:04.67 ID:CqIKSWGFo
私は、夜の住宅地を車で走っていた。目指しているのは、テオが入っている病院。
胸に押し掛かっている重い感情はもう、崩壊寸前のところまで来ていた。エルサ達の家族の話を聞いた私は、一瞬、本当に思考が停止してしまっていた。
そして沸き起こってきたのは、情けないことに、その事実を否定したいと言う気持ちだった。
アヤが止めるのも構わずに二人から家族のことをさらに聞き出した私は、
ついにそれを認めるしかないことを理解して、込上がってきた悪心を堪えつつ、二人になるべく悟られないようにとトイレへ駆け込んだ。
何度も戻している最中にアヤが来てくれて、優しく背中をさすっては
「ごめん…あいつらの家族のことは知らなかった…」
なんて私に謝った。
謝らなきゃいけないのは私の方だっていうのに、アヤから伝わって来るのは、本当に申し訳ない、って気持ちでいっぱいになっている彼女の優しさだった。
ひとしきり吐いて落ち着いた私は、ふと、思った。当然のことなのかも知れない、って。
あの戦争で、人類は宇宙と地球合わせてその半数の命を失った。
そのうち、コロニー落下による被害がその何割に当たるかは分からないけど、
その家族や友人、親戚が生き残っているとなれば、とてもじゃないけど少ないなんて考える方がどうかしている。ジオンは、それだけのことをしてきたんだ。
アヤの夢を一緒に来て叶えたい?カレンと仲良くしたい?オメガ隊のみんなと過ごした楽しい時間が嬉しかった?
そんな事を、私に言う権利があったのだろうか?私がそんな事を思うのを誰が許したのだろうか?
アヤや他の連邦側の人達には、私を罵倒して殴り倒して良いくらいの権利がある。
そして…私にはそれを受け入れなければならない義務がある。
戦闘員でもない、ただ日常の生活を送っていた家族をあんな非道な方法で殺されたカレンやエルサ達には、特に…だ。
だから、私はアヤに言った。カレン達に、ちゃんと話をしたい、って。それが終わったら、アヤにもちゃんと話をさせてくれ、て。
アヤは最初はアタシに対してはそんな必要はない、と言ってくれたけど、私は首を振ってそれを断った。
もしカレンやエルサ達が私を蔑み、蔑ろにするのなら、私はアヤのそばには居られない。
あのとき…アヤと一緒に逃げている最中に、私は気がついていたはずだ。私は、アヤから大切な“家族”を捨てさせたんだ、って。
それでも、オメガ隊のみんなはアヤを拒んだり見放したりせずに、受け入れてくれた。
でも、もしカレンやエルサが私を拒めば、私のそばに居てくれようとするアヤとは決定的な溝になりかねない。
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