7: ◆EhtsT9zeko[sage saga]
2015/01/10(土) 21:57:54.19 ID:2i7hE443o
「あぁ、先にシャワーに入りたいって言ってたから、夕食は…六時半くらいがいいかな」
アヤが腕時計に目をやってそう教えてくれる。うん、それなら余裕で間に合いそうだな。
「了解、じゃぁ、準備しておくね」
「あ、レナ!アタシ腹減った。これからダイビング機材洗うから、夕飯遅くなるパターンだし、なんかつまめるのない?」
アヤはキッチンに戻ろうとした私をそう言って引き止めた。もう、仕方ないんだから…
「ちょっと待ってて、お昼の残りのパン持ってくる」
私はキッチンに戻って、お昼にカレンと食べたバターロールの残りを一つ取り出して、
包丁で切れ目を入れてそこに夕飯用に作ったお肉と野菜の炒め物を挟んでアヤに持っていった。
「はい、おやつ」
そう言って手渡そうと思ったけど、ふっと、悪巧みを思いついてしまって、私はニンマリ笑ってアヤに言ってみた。
「はい、あーん」
「えぇ!?」
とたんに、アヤが顔を真っ赤にしてそう小さく声をあげる。それでも私はパンをアヤの目の前に突き出しながら
「ほら、あーん」
と言い直す。アヤはホールの方を振り返って自分に視線が集まっていないことを確認すると、私の手の中のパンを二口で食べきった。
顔を赤くしながらモサモサと不服そうにパンを食んでいるアヤに、今度はお茶を入れて持ってきてあげる。
さすがにアヤは私の手からコップを奪い取って自分で飲んだ。
「ん、うまい。ありがとな」
コップを返しながら、アヤは私から視線をそらせて言う。相変わらず、耳まで真っ赤だ。
「どういたしまして。片付け、お願いね」
「あぁ、うん。そっちも、夕飯頼むな」
私たちはそう声を掛け合った、持ち場に戻った。
私はソフィアと夕食の準備をしてバーンズさん達に声を掛け、もちろんカレンにも別のテーブルを用意して夕食を振舞う。
私とソフィアは、キッチンに作った簡易のダイニングでおしゃべりをしながらの食事になるのがいつものことだ。
それからタイミングを見計らってワゴンを押して行って、食べ終わった食器を回収し、テーブルの上をキレイにしてから、
用意したお茶のセットをテーブルに置いてキッチンに戻ってくる。
ソフィアと食器を洗おうとしていると、不意にギィっとスイングドアの開く音がした。見るとそこには、カレンの姿がある。
「あれ、カレン、どうしたの?」
「手伝うよ」
私の言葉に、カレンは頭を振ってそう応えた。私は、すこし戸惑ってしまう。だって、気を使わなくって良い、って言ったのはカレンだ。
私もそう思ったけど、そう思ったからこそ、手伝いなんて気遣いは、やっぱりなんだか心苦しい気がする。
「気を使わないでって話じゃなかったっけ?」
私がそうカレンの説得を始めようとしたら、カレンはなんだか楽しそうな顔をして笑って言った。
「あぁ、ごめん、性格でね。頼りっぱなしだったり任せっぱなしだったりするのが苦手なの。だから、気が済むまででいいからやらせてよ」
カレンの口調は、まるで私を試すような、からかうような、そんな感じだった。
でも、どうやら私に気を使っている、って感じではないっていうのはなんとなく感じ取れた。気遣いというよりもむしろ、遊びに来たような感触がある。
なんというか、仲良くしようよ、って言っているような、そんな雰囲気にも感じられた。
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