8: ◆EhtsT9zeko[sage saga]
2015/01/10(土) 21:58:20.72 ID:2i7hE443o
「なんかそれ、ズルい言い方だね」
私がそう切り返してみたら、カレンはニヤっと笑って
「そうかな?本心で言ってるだけなのに」
とおどけた様子で言い返してくる。もう、そういうところもアヤと一緒だよね。一筋縄じゃいかない、っていうか。
まぁでも、本当に気遣いじゃないっていうのは分かったから私は、仕方ないな、ってわざとらしい表情をカレンに見せつけてあげてから、
「じゃぁ、一緒にやろう」
と応じた。あえて“お願い”ってニュアンスを込めなかったのだけど、カレンはそれをいたく気に入ってくれたようで、
「うん」
ニコッと優しい顔で私に笑いかけてくれた。
「計画書の方はどう?」
ソフィアは片腕がないので洗い物は難しい。その分、いつもほうきを持ってキッチンやホールの掃除をお願いしている。
洗い物は私の仕事。そんな私の隣に立って、食器を擦ってくれているカレンにそう聞いてみた。
「あぁ、概ね完成してるよ。プレゼンはたぶんなんとかなると思う。あとは、良い不動産があれば先に見繕っておきたいところだね。
いつまでもここに世話になってちゃ悪いし」
「別にうちは構わないよ?大口の予約が入ったら一晩か二晩、私達の部屋かソフィアの部屋に移動してもらうかもしれないけど…」
「そうもいかないって。部屋が一つ埋まってるってことはそれだけ稼働率を下げちゃってるんだ。
ほら、もし万が一、出撃する戦闘機に不備があったときには、すぐに予備機を投入できるようにしておかないとまずいってのと同じだよ」
カレンはそんなことを言いながら、チラっと私を見やる。もちろんカレンも、私が元ジオンの軍人だってことは知っている。
そんな例え話を投げかけてくるのは、そんなことは気にしないよ、って暗に私に伝える意味合いがあるんだろう。
カレンがどこでどんな戦闘を経験してきたのか、は聞いたことがないけれど…でも、オメガ隊にいた彼女だ。
きっと彼女も、あの隊長達と同じように国や所属じゃなくって、人となりを真っ直ぐに見つめられるような人なんだろうって、そう感じた。
「そうだけどさ…もうちょっとお金が貯まったらね、西側の敷地に、母屋を建てたいなって思ってるんだ」
「母屋を?」
「うん。稼働率、って言ったら、私たちも客室を使っているわけだしね。食事とかはこっちで摂るにしても、寝る場所は別棟があれば、
きっとその方が良いかなって思うんだ。なんなら、そこにカレンの部屋も作っちゃえばいいかな、って」
「やめてよ、そこはあんたとアヤの愛の巣になるわけだろ?」
そんなこと考えもしてなかったのに、カレンがいきなりそんなことをいうものだから、私は顔が急に顔が火照るのを感じてしまった。
「ああああ愛の巣じゃないよ!っていうか、べ、別に私とアヤはまだそんな関係じゃないから!」
「へぇ、違うの?てっきりそうなのかと思ってた」
「ち…違うわけじゃ…ないかも知れない…かも知れないけど…」
「えぇ?なに、それ」
カレンはいたずらっぽい笑顔を浮かべながらわざとらしくそう言ってくる。あれ、これって、なんか覚えがある…まるで、アヤに遊ばれているときみたいな…
そう思って、私はハッとした。これ、完全にからかわれてる!
221Res/449.61 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。