22: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/01/16(金) 20:51:49.04 ID:6UJ3zAla0
目の前には、山盛り一杯の苺パスタが鎮座なされていたのだった。
「その名も苺パスタ・零式です」
「無駄にかっこいいネーミング!」
マジか。
HDなのか。
3では出してくれないのか。
見るものの食欲をそそらない鮮やかな桃色のパスタに、ソースとして満遍なくかけられたお手製であろうイチゴジャム。
その更に上には生クリームに加え、苺に良く合うチョコレートアイスが色合いも良くお皿を彩る。
「おっ、美味そうなもん食うとるやないけ、暦」
「村上……」
僕が滝のような汗と共に苺パスタ零式を前にしていると、今から出勤であろう村上がやって来た。
村上巴、十三歳。
うちに所属するアイドルで、義理と仁義に生きる現代においては珍しい女の子だ。
聞いたところによるとお父さんが相当過保護で厳しい人らしい。
なお、村上はこの橘謹製苺パスタのファンらしく、時々作ってもらっているらしい。
「な、なぁ村上。良かったらこれ、食べ……」
「巴さんの分はちゃんと用意してありますから、どうぞ」
「ほんまか! こげな美味かもんを作れるんじゃ、うちの専属料理人にならんか、橘」
「嬉しいお誘いですけど……」
「それもそうじゃの。うちもじゃが、アイドルの道があるからのう」
「…………」
今更イモ引けんわな、と美味しそうに苺パスタにがっつく村上。
その食べっぷりは見ていて気持ちのいいくらいだ。
そうか。
もう退路はないということか。
いいだろう。
覚悟を決めろ、阿良々木暦。
ここが男の見せ所だ。
それに、不肖阿良々木暦、女子小学生に作ってもらった食事を食べないなんて選択肢はあり得ない。
それを曲げてしまったら、阿良々木暦は阿良々木暦でなくなってしまう。
そう、ひたぎが好きだと言ってくれた、阿良々木暦に――。
「何をぶつぶつ言うとるんじゃ。食うなら早よ食わんかい。美味かうちに食うんは料理人への敬意じゃろが」
「……いただきます!」
村上の声に後押しされ、猫騙しかと誤解される程に勢い良く両の手を合わせる。
フォークが鉛のように重い気がするが、気にせずに皿に穴を空ける勢いでパスタを巻き取る。
熱で軟度を増したジャムと生クリームが付随するのにも構わず、一口。
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