過去ログ - 【艦これSS】提督「壊れた艦娘と過ごす日々」04【安価】
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581: ◆oeBS4v7bwY[saga sage]
2015/01/24(土) 01:52:38.99 ID:m/IKqfgmo

提督「……」

 駆逐棲姫。人型をした深海棲艦。

 言葉を発し、意思を持ち、感情を纏い、武器を使う。

 限りなく艦娘に近い深海棲艦。そして限りなく彼女に似た深海棲艦。

提督「……春雨」

 ふわりと桃色の髪を翻らせて歩く彼女の姿がいつだって脳裏にある。

 控え目な性格。丁寧な口調。少しだけ臆病な物腰。それでも確かな芯の強さ。

 もう今は居ない彼女の幻想が、海の向こうから敵意を持ってやってくる。

 一度目の襲撃事件のとき、俺は海ではなく陸に居た。

 死体は帰ってこなかった。ただ報告書という紙切れと、名札のなくなった部屋だけがそこにあった。

 二度目の襲撃事件の時も、俺は海ではなく陸に居た。

 死体はまたも帰ってこなかった。一度目の時に鎮守府を包んだ、悲嘆と怒気をかき消す静寂だけが、そこにあった。

 三度目の襲撃事件は陸で起きたが、俺は鎮守府ではなく本部に居た。

 何も教えてもらえなかった。ただ死んだ艦娘を羅列しただけの冷たい文字が墓石に並んだ。

 金剛は壊れた。雪風も壊れた。

 そして春雨だけが、俺の目の前で死んだ。

 喉が枯れるまで叫んで、手錠が手首を傷つけても叫んだ。きっと金剛が俺にしてくれたように叫んだ。

 やめてくれと懇願した。みっともなくとも、情けなくとも、春雨が助かるのであれば
それでよかった。

 それでも春雨だけが、俺の目の前で死んだ。

 いつだって俺は何も出来なかった。

 ただ眼前で射殺される春雨だけが──


提督「──っ……」

提督「……、……。はぁ」

 ……うたた寝をしていたようだ。

 一番多く見る夢が彼女なのは、きっと手の届きそうな場所だったからだろう。

 握り締めたままだった書類が微かに皺を作っていた。

 軽く頭を振って、書類を整える。

提督「……今日は、何が出来るか」

 自分に何が出来るだろうか。

 こんな自分に、一体誰を救えるだろうか。




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