過去ログ - 【艦これSS】提督「壊れた艦娘と過ごす日々」04【安価】
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862: ◆oeBS4v7bwY[saga sage]
2015/01/26(月) 00:09:57.86 ID:BYw6X1W8o

 致命傷こそ避けながらも、しかし全ての砲弾をかわしきるまではできず、少しずつ少しずつ彼女の身体に傷が増えていく。

 放り投げようとしていた大和の腕の事は既に忘れ、まるでビート板かカルネアデスの板のように強く握り締める。

 潜水艦である彼女にとっては、重りなど無くても潜れるのだが、もうこれは殆んど冷静さを奪われた中での、限りなく混乱に近い僅かな考えだった。

 大和の腕を抱きしめ、その断面と恐怖に涙を流し……もとい、海に混ぜながら、必死に海中を進む。

 しかし潮流はそれを阻むように彼女を深海棲艦のほうへと推し戻していく。

 背後で砲弾が水を抉るように沈んでいく。

 あそこまで戻ったら、きっと自分は殺される。

 射殺か爆殺か、それとも食べられて死ぬのかは分からなかったが、少なくとも大和と同じ運命を辿る事だけは事実だ。

 震えで合わない上下の歯を必死に食いしばりながら、何とか潮流の分け目を縫おうと深く深く潜った。

 三十メートル、四十メートル。

 海面から放たれる砲弾は、勢いを失いながらも降り注ぐ。

 その内の一つが彼女の足を霞め、再び嗚咽を零しながら更に深く潜った。

 五十メートル、六十メートル。

 果たして砲弾が、そこまで深く殺傷能力を保ったまま水中を切り進めるのかは定かではなかったが、そんな思考をこの場でしろと言うほうが酷だろう。

 出撃前に堪えていた吐き気に再度襲われながら、必死になってその場を逃げる。

 だけれど状況は更に彼女をどん底へと突き落としていく。

伊58「ひ、ひ……」

伊58「ひ──あ?」

伊58「……! ……っ!」



 潮の流れが、変わったのだ。

 海面に対して平行だった流れが、垂直へと。

 その結果、彼女の体は、自分の意思とは関係なく、海の底へと沈んでいく。


 水深七十メートル。

 それは、彼女がかつて試した、生きていられる境界線だった。




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