過去ログ - 【艦これSS】提督「壊れた艦娘と過ごす日々」04【安価】
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869: ◆oeBS4v7bwY[saga sage]
2015/01/26(月) 00:37:09.22 ID:BYw6X1W8o

伊58「──!」

 目を覚ましたとき、彼女は海面に浮いていた。

 どれくらい意識を失っていたのかは分からない。

 また、どうやって自分がここに来たのかも分からなかった。

伊58「……っ、お、えっ。げほっ! っ、は、はぁ」 
 
 脳が呼吸を忘れていた。それを思い出させるように肺がせりあがり、激痛と共に身体が酸素を欲した。

 だが、思うように息が吸えない。水圧で肺が圧迫されすぎたのか、それとも酸素を身体に送るポンプがおかしくなったのか、理由は分からないがいくら大きく口を開けても、酸素を吸うことが出来なかった。

伊58「は、は、は……」

 決して笑っているわけではない。息を吸おうとしているのに、それができず、引きつったような声しか出ないのだ。

 その度に胸に激痛が走る。

 身体がバラバラに弾けとぶのではないかと思うくらいに重く痛い。

 指一本さえ動かすことがままならなかった。

伊58「は、は、はぁ、う……ぐ」

 酸素を少しでも通そうと、喉が開く。手を突っ込めば、すんなり食道まで届くのではないかというくらいに。

伊58「ぐ、うう……おえっ」

 しかし呼吸の替わりに出てきたのは苦痛にまみれる声。

 胃が肺を押しのけ、喧嘩する様に中身をひねり出した。

 飲み込んだ海水と胃液。そして血。

 僅かばかりの食事はとうに消化され吐しゃしなかったのが、幸いといえば幸いかもしれない。

伊58「か、ひゅ……ぐ、お、ひくっ」

 肺がひきつき、暴れている。

 抑えようにも身体の中の事などどうしようも出来ず、ろくに指さえ動かせないまま海面をのた打ち回った。

 今深海棲艦が彼女の前に居たら、楽に捕食できるだろうし、彼女もそれでもいい気さえしていた。

 傍らにぷかぷかと浮かぶ大和の腕を、白目を向く手前で見やりながら、そこから再度気絶と過呼吸を繰り返した。


 ──それが彼女の最後の海での記憶であり、以来彼女は人に会うことさえ出来なくなった。

 彼女にとっては提督である人間も、仲間である艦娘も、深海棲艦と同等に変わらず恐ろしいものになった。




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