過去ログ - かわた「 どうもかわたです。SS書いてみたのでみなさん読んでください!!」
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名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 20:57:32.30 ID:clCYALcTo
六畳一間の中では、19型のテレビが唯一の光源だった。彼は湿気って薄くなった布団の上でぼんやりと佇んでいる。テレビの方を向いて座っているが、別段画面に気をやっている訳ではない。
ただ目の前の電子機器を、聴覚と視覚が求めていた。その欲求を満たすものが、その空間に一切無かったというだけなのだ。コンセントを抜いてしまえば無音と暗闇が心持ちをより不安定にさせる。それが何より耐えられなかった。とにかく何かを感じていたかった。故に、彼にとっては布団のカビ臭さでさえ丁度いい刺激になった。
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2
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 21:04:31.66 ID:6BCtAyC2o
とは言えどこの部屋の外から来るものは全て刺激が強過ぎたので、しばらく過去にベランダに通じる窓のシャッターを下ろし、太陽を外へ締め出した。外界から隔絶されたという実感は、当初逆説的に彼の鬱憤を『晴らした』。 漸次その感情は薄れていったが、彼にとっての不純物を遮断する壁が再び開かれることはなかった。
3
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名無しNIPPER
[sage]
2015/01/21(水) 21:05:41.31 ID:psU69ygSO
!?
4
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 21:07:11.54 ID:6BCtAyC2o
テレビの光は光源から遠ざかるに連れ弱くなっており、そのフェードアウトの途中にカレンダーがぼんやりと視える。しばらく捲っておらず、今日が何月何日か知ることすら出来ない。とりあえず現在目の前に映る番組はワイドショーだから、恐らく平日昼時なのだろう。そんなことを考えながら、彼は目を擦った。
5
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 21:15:37.47 ID:6BCtAyC2o
彼が重い精神病にかかり、会社を辞めてからどれ程経っただろうか。1ヶ月ほどかも知れないし、1年くらいは経ったかも知れない。もしかしたら実は昨日退社してきたんじゃなかろうか。そんな思考をしてしまうほど時間の感覚が麻痺している。ガスの供給が止められているのを思い出し、彼は「ああ、だったら2ヶ月は経っているんだろうな」と小さく呟いた。
6
:
名無しNIPPER
[sage]
2015/01/21(水) 21:16:47.95 ID:7GTZUenAO
ファッ!?
7
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 21:21:36.21 ID:6BCtAyC2o
ふと、自らの人生というものを振り返ってみる。小学生の頃はよかった。周りにいつでも誰かがいて、笑顔が溢れた。中学生の時はもっとよかった。彼女もいたし、部活動も充実していた。唯一の心残りは両親の離婚に泣き縋りついた未熟故の恥ずかしさだろうか。
高校生になってからは特筆すべき所は見当たらない。友人は少なくも居ないという訳でなく、恋愛沙汰もぼちぼちだった。母子家庭の身では家計もそう余裕のあるものでなく、学業とアルバイトで時間を消費した。
8
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名無しNIPPER
[sage]
2015/01/21(水) 21:28:14.17 ID:DwqQTH5kO
また君か....
早く寝なさい
9
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 21:29:17.36 ID:6BCtAyC2o
大学生の時代は一番良かったかも知れない。地元の私立大学に進学した彼は、奨学金を貸与されながら研究に励んだ。長期の休業には旅行も出来たし、当時震災があった地域へボランティアをやりに行ったりもした。
とにかく、優等生のテンプレートのような過ごし方をした。
せめて母にだけは、片親という自らのコンプレックスを悟られぬよう、なるべく優良な人物であろうとした。
10
:
名無しNIPPER
[sage]
2015/01/21(水) 21:31:35.33 ID:NMDukSfAO
まさかまた来るとは…
11
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 21:33:39.45 ID:6BCtAyC2o
就職活動はそれなりにスムーズだった。エントリーシートの記入数は50を越えたが、うち二割程度は採用通知に変わった。第一に希望した職種ではなかったが、それなりにまともな企業を選び、来たる社会人一年目の4月へ向け英気を養った。
12
:
名無しNIPPER
[sage]
2015/01/21(水) 21:37:16.44 ID:QbGL7YC9O
二段構えとはな
13
:
名無しNIPPER
[sage]
2015/01/21(水) 21:43:07.68 ID:nh/ZSBt9O
お前がいくら書いても西鉄の直通運転は未来永劫ありえねえから安心しろw
14
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 21:43:19.76 ID:6BCtAyC2o
「あれから2年か」
22歳までの自分と、今の自分。二人を重ね合わせて見ると、まるで別人ではないかと錯覚させられる。元々華奢な体つきはより細くなり、マッチ棒を連想させる。声帯も長らく使わぬと喉からはくぐもったような音が出る。髪も髭も手入れはしていない。髪はテレビを見るとき邪魔になるので、近所にあるスーパーの惣菜コーナーから拝借した輪ゴムで、頭の後ろに括っている。
15
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 21:54:35.00 ID:clCYALcTo
彼が気の病に堕ちたのは、およそ青春時代を卒業した後二度目の夏の頃だ。日頃のルーティンワークにもようやっと慣れ、上司からの小言を上手にいなせるようになった。職場は実家から電車と地下鉄で三時間の距離であったので、入社する際はこれを機にと独り暮らしを始めた。
16
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名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 22:01:09.87 ID:clCYALcTo
掃除洗濯料理買物、生活に必要なことは当然ながら全て独りでやった。一年半の歳月で、時間のやりくりを覚え、着いていくのが大変だった時間のスピードに追いつけるようになった。
17
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 22:07:04.07 ID:clCYALcTo
>>14
「あれから2年か」の部分は無視してください
時間の感覚がないのに2年経ったのは理解できているというのは不自然なので訂正します
18
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 22:13:25.11 ID:clCYALcTo
そんな中、不幸というのは呼ばれてもいないのに唐突に訪れた。平日の朝、重い頭を起こし身支度をした彼の携帯に着信が入った。母からだった。
「もしもし」
「もしもし……、川田……下の名前が確認出来ませんが、ご家族の方でしょうか」
まだ寝ぼけているのだろうか。そうですが、と答えて、その声が母のものではないことに気がついた。
19
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 22:22:27.77 ID:clCYALcTo
「あの、どちら様でしょうか」
尋ねて、状況を把握しようとした。聞けば、電話の相手は警察らしい。
いろんな思考が頭の中をぐるぐる暴れ回った。母が何か犯罪でもしたのだろうか。万引きか何かだろうか。いや、事故かも知れない。軽い怪我なら良いが、とうに齢50を過ぎた老体だ。そこから悪化しなければいいが……。
そんな彼の不安を上回る衝撃が、渦巻く思考を真っさらにした。訃報だった。
20
:
名無しNIPPER
[saga]
2015/01/21(水) 22:36:12.32 ID:clCYALcTo
会社への連絡も忘れ、病院へ急いだ。それからのほとんどの記憶は脳が保持しておらず、気がついたら彼は喪服を着ていて、同じ空間で坊主が母に向けて経を唱えていた。その数日の間で思い出せるのは、病院への道中見た、電車に映る自分の青ざめた顔だけだ。
21
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名無しNIPPER
2015/01/21(水) 22:36:22.51 ID:djjEDh+gO
俺が知ってるかわたくんじゃない
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