過去ログ - 恭子「いつか聞きたいその2文字」
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9: ◆aaEefGZMoI[saga]
2015/01/22(木) 20:28:36.01 ID:DsjzTcAto
それからというもの、落ち着きのない日々が続いた。
あの日の声と映像が浮かび上がっては、何度も自分の胸に手を当ててみる。
髪を手でほぐし乾かす後ろ姿。
オイルを塗りたくる手の捌き。
妹の破局に奮い立つ姿。
胸を打つ脈が速くなり血が回りだすと、心に被さっていた照れ隠しやガードといった付着物が取り去られ、本当の心の姿が澄んだ水の中に露になる。
インターハイが終わる頃には、私は完全に自分の心に気づいていた。
悟った瞬間の衝撃、それと同時に襲い来る以前からわかっていたような既視感。
相反する感情の荒波にぐちゃぐちゃにかき乱された心が、彼女の顔を思い出すことで一斉にその方向を指し示す。
その引力によって忽ち静まり返った水面の上で、ついにそうなってしまったのだと、私はため息をつくしかなかった。
ただ、そうなると、私の為すべき仕事は容易ではない。
この気持ちを、いかにして伝えようか。
先述の通り、私は今まで『恋』の『こ』の字も知らない恋愛初心者。
さらに同性同士とくれば、これはこの上ない無理難題だ。
だが一度持たされた爆弾、放っておけばただの不発弾となり、生涯いつまでも心に重くのしかかる。
いつかは言わなければ。
火も付けられずに燻る思いを抱え続けながら、時間はあっという間に過ぎていった。
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