過去ログ - 千早「嵐の後には凪がくる」
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1: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:17:20.37 ID:1p+pXfKUo
「ねえ、真美」

「……なに?」

「い……、いえ。何でもない……」

「そう。真美さ。今忙しいから、千早お姉ちゃん、邪魔しないでくれる?」

「え、ええ……」

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2: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:18:26.35 ID:1p+pXfKUo
まただ、また、真美に冷たくされてしまった。

私は真美に背を向けてとぼとぼと事務所を後にする。

こうなったのもきっと、全て私の所為なんだ。
以下略



3: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:19:30.08 ID:1p+pXfKUo
―――
――


「千早、真美。二人とも喜べ!ユニット結成が決まったぞ!」
以下略



4: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:20:29.35 ID:1p+pXfKUo
真美は双子の妹、亜美の陰に隠れないように、私は私に欠けているアイドルらしさを補う為に。

それぞれの弱点を補えるようなユニットを組めば、きっと事務所のみんなにも負けないコンビネーションを発揮出来るだろう。

そう、プロデューサーは考えたそうだ。
以下略



5: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:21:10.29 ID:1p+pXfKUo
とにかく。私たちのコンビネーションなら、きっと頂点を目指せる。

……そう、思っていた。


6: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:21:38.09 ID:1p+pXfKUo
けど、現実は。

『765プロの新プロジェクト、失敗か!?』

『伸び悩む原因は双海真美の実力不足』
以下略



7: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:22:20.18 ID:1p+pXfKUo
あることないことを週刊誌に囃し立てられ、私たちは自信を失い、オーディションにも落ち。

とにかく、悪循環だった。

真美が実力不足なわけがない。一緒にレッスンをしている私がそれを一番よく知っている。
以下略



8: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:22:47.22 ID:1p+pXfKUo
そう思って丁寧に真美のレッスンに付き合っていたんだけど、それがかえってストレスになっていたのだろう。

汚名返上を賭けて挑んだオーディションに落ちて、ついに真美は爆発した。

結果を知るや否や、控え室で私の胸ぐらを掴んできたのだ。


9: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:23:15.96 ID:1p+pXfKUo
「ほんとは憐れんでるんでしょ!?真美のこと!!」

「そんなわけない!」

「レッスンも真美の事ばっかで!!ホントは真美が足引っ張ってるって思ってるんでしょ!?」
以下略



10: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:24:08.77 ID:1p+pXfKUo
目に涙を溜めた真美が控え室を出ていき、私は一人取り残された。

……私の、わたしのせいだ。


11: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:24:37.66 ID:1p+pXfKUo

――
―――

その日以来、真美に話しかけてもさっきみたいに返されるのが常で、私もかなり気が滅入っていた。
以下略



12: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:25:03.68 ID:1p+pXfKUo
私は事務所の近くにある公園に入って、缶コーヒーを買ってベンチに座る。

甘い缶コーヒーに口付けて、冬の空をぼーっと眺める。

私は何をしているんだろう。
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13: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:25:32.88 ID:1p+pXfKUo
「隣、いい?」

「はる……か?」

春香は私の隣に腰掛けて、紅茶のペットボトルの蓋を開ける。
以下略



14: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:26:32.61 ID:1p+pXfKUo
私たちは飲み物を手に持ちながら、暫く黙り込む。

「ねえ、千早ちゃん?」

「どうしたの、春香」
以下略



15: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:27:17.48 ID:1p+pXfKUo
「真美の事、見限ったりしてない?」

「そ、そんな事はない……私は、真美と一緒じゃないと、嫌」

「そっか。ふふ。妬けちゃうな。真美もさ、こうやって一人で空を眺めてたんだよ」
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16: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:27:47.11 ID:1p+pXfKUo
「うん。私になんて言ったと思う?」

「いえ、分からないわ……」

「仲直りしたい、千早ちゃんに謝りたいって。八つ当たりしたことを」
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17: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:28:17.65 ID:1p+pXfKUo
自分の力不足が真美を苦しめている。それを思い出して、私は言葉を詰まらせて俯く。

春香が何も言わずに私の背中をさすってくれた。

萩原さんじゃないけど、私はなんてだめだめなんだろう。
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18: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:28:54.98 ID:1p+pXfKUo
「千早お姉ちゃんは、不甲斐なくない!!」


19: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:30:37.45 ID:1p+pXfKUo
振り返ると、隣でよく聞いていたあの声。

「真美……」

「ごめんなさい、ごめんなさい!!」
以下略



20: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:31:03.27 ID:1p+pXfKUo
「私こそ、ごめんなさい……」

「千早お姉ちゃんは悪くない、真美が、真美が……!」

「……あーあー、えーと。イチャイチャするのも良いけど私の事、忘れてないかな?」
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21: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/01/25(日) 02:31:37.28 ID:1p+pXfKUo
改めて真美が隣に座って、ぽつりぽつりと話し始める。

「その……真美もさ、千早お姉ちゃんが伸び伸び歌えるように、サポート出来るように、頑張ってたんだ」

「ええ……私も、真美が伸び伸び出来るようにって、サポートに徹していたのよ……」
以下略



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