133: ◆TI638OYiZI[sage saga]
2015/02/01(日) 23:10:43.69 ID:BPoS8XS7o
「どうかな、迷惑じゃなければいいんだけど……」
橘君が訊ねる。
「迷惑だなんて、そんな……。ありがとう橘君。私、とっても嬉しいわ」
自分で自分の言葉に、苛立ちを覚えてしまう。こんな時でさえ、あたしは上っ面の
お礼しか言えないのだ。
「喜んでもらえたみたいで、よかったよ」
違うのだ、あたしが言いたかったのは、あんな白々しい科白じゃない。――けれども、
そんなことを言えるわけがなかった。
あたしは白を黒と言いくるめ、そして独りで、勝手にこんがらがっていくのだ。
「でも橘君……その、これ高かったんじゃない?」
何かを誤魔化すようなあたしの問いかけに、橘君は一瞬目を丸くして、そんなことは
些事だと言わんばかりに首を振った。そして、
「空港の売店で売ってたものだし、そんなでもないよ」
と言って、屈託なく笑った。
橘君は、あたしが喜ぶ姿を見て、それで充足しているらしかった。
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