9: ◆00ZRE1DaEk
2015/02/01(日) 22:10:25.19 ID:Yw6s2/2YO
「あのだな……」
「はい……」
「その……だな」
「はい……」
「……お」
そこだ、そこで「お前が欲しい」とかなんとか言うんだ。
心の中で別の俺が指示を出す。
「お?」
「お……腹、減らないか?」
我ながら大したへたれ具合だと思う。
中の俺は呆れ顔で方をすくめた。
せっかく準備した指輪。
これは、巷では何の役にも立たないが、ここでは重要な意味をなす。
レベルが上限に達した艦娘にしか価値がないという指輪。
キツい制約だが、目の前の彼女はそれを満たしている。
あとはこれを渡すだけ。
そのあと一歩が踏み出せない。
「…………はぁ」
もしかすると彼女も薄々感づいているのかもしれない。深い溜め息を吐いた。
「……午後七時です」
心なしか睨んでいるように見えなくもない千歳はぶっきらぼうに言った。
窓を見ると既に日は傾き、沈みそうな太陽は真っ赤に燃えている。
「……そうだな、鳳翔さんの店に行くか」
「今日は提督の奢りでいいですか?」
むすっとした顔で尋ねる千歳。
何故、などと聞くのはやぶ蛇になりかねん。
そう思って俺は、おう、とだけ答えた。
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