過去ログ - モバP「二兎追い人の栞」
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15: ◆m03zzdT6fs[saga]
2015/02/08(日) 09:03:36.45 ID:RKgN37bdo
『んじゃ、いきますか』

 そう、ひとり呟いて、僕はノートパソコンの電源を落とし、部屋の反対側を見た。そこにあったのは、僕の人生の一部であり、最大の趣味。つまり……壁一面を埋め尽くさんばかりの、本の山。

 決して大きいとは言えないアパートの一室だけれど、それでも壁にうずたかく積まれた、四ケタに届くか、と言う量の山から、適当な一冊を選び出した。

 タイトルは――。

『”指輪物語”……か。ちょっと重すぎる気もするけど』

 僕はその小さな単行本をジャケットのポケットに入れる。いつ買った物だろうか。記憶には、思い出せなかった。あるいは、僕が上京してくるときには持っていたのかもしれない。

 だが、僕にはあまり関係のない事だ。読んでない本は等しく価値があるし、読んでしまった本にはあまり価値が無くなってしまう。

 二度と読まないわけではないが……よほどのことがない限り、もう一度読むことはないのだろう。

 ふと、僕は表紙を捲った。ぱら、と一枚の紙片が落ちる。栞代わりの、折りたたんだ紙。僕のではない。

 となると、たぶん中古で買った物なのだ、これは。だから、前の主の物。僕は落ちた紙を拾い上げた。何も書いていない、少し黄ばんだただの紙らしい。



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