72: ◆m03zzdT6fs[saga]
2015/04/06(月) 02:17:45.39 ID:yDQwAsyco
(……相変らず、きれいな人だ。本当に)
そんなことを考えている自分を客観的に見れば、どう見ても変質者なのだけれど。でも、今の僕にはそこまで考えが回らなくて。目の前の女性に完全に見とれている。
それからどれくらいだろうか。彼女の顔が、ゆっくりと本からこちらに向いた。きっと偶然だったのだろう。だが、間違いなく一瞬……彼女と目が合う。
73: ◆m03zzdT6fs[saga]
2015/04/06(月) 02:19:44.95 ID:yDQwAsyco
『あっ、えっと。これ買いたいんですけれど、大丈夫、ですよね……?』
と何とも情けの無い事を尋ねてしまう。それよりも、
(……まあ、やっぱり覚えているわけがないよね)
74: ◆m03zzdT6fs[saga]
2015/04/06(月) 02:20:12.96 ID:yDQwAsyco
「……648円、です」
僕はそれを聞いて、五百円玉を一つ、百円玉を一つ、五十円玉を一つ財布の中から引っ張り出して。それで彼女へと手渡そうとする。
しばらくの間、彼女は不思議そうに僕の差し出した手を眺めていたが、やがて思い至った様に、レジの隣に置かれていたカルトン――要は小銭トレーをスッと差し出して。
75: ◆m03zzdT6fs[saga]
2015/04/06(月) 02:21:33.35 ID:yDQwAsyco
「……そう、ですか」
と彼女は小さく呟く様な声でブックカバーを取り付ける手を止める。ゆっくりと、そのままやや俯いた姿で、僕の方へと文庫本を差し出してくる。
僅かに見えた白い手が、酷く綺麗に……また、華奢に僕には映って。やっぱり、僕には分不相応な芸術品を見ている気分にさせられて。
76: ◆m03zzdT6fs[saga]
2015/04/06(月) 02:23:43.38 ID:yDQwAsyco
『その、なんでもない事ですから。えっと、また、来ます』
なんて口走っていた僕は、そのまま踵を返せば慌ただしく店を出て、走り始めた。
きっと、奇妙な人と思われたことだろう。しかも”また来ます”だなんて、変質者と思われていたらどうするのか。
77: ◆m03zzdT6fs[saga]
2015/04/06(月) 02:24:56.78 ID:yDQwAsyco
今回の更新は以上となります。
前回更新より大幅に間が開いたこと、申し訳ございません。
まだもうしばらくこういった状況が続くように思えます。
次回更新は未定ですが、二週間以内には行いたいと思っております。
それでは、これまで読んでいただきありがとうございました。
78:名無しNIPPER[sage]
2015/04/06(月) 08:45:03.29 ID:HV0pqjE2o
乙
待ってる
79:名無しNIPPER[sage]
2015/04/06(月) 18:09:48.72 ID:axXwEFLi0
乙っす
80: ◆m03zzdT6fs[saga]
2015/05/02(土) 14:21:29.18 ID:WCaC7HRCo
本日夜半に投稿を予定しております。
一月近く開いてしまい申し訳ありません。
81:名無しNIPPER[sage]
2015/05/02(土) 14:30:16.95 ID:7r7Zw8CLO
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