過去ログ - 唯「ピンク・ビック・バスタオルを買いに」
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/02/07(土) 19:09:58.23 ID:HzA0YEX8o


お風呂から出て髪を乾かすところが、髪のとても長いあずにゃんとって最も苦労するところらしい。
タオルはすぐにぐじゅぐしゅになってしまうし、バスタオルを髪に巻くこともできない。
ドライヤーは時間の割に乾きが悪く、電気代もかかる。
石油ストーブは最高だ、とあずにゃんは言う。
あずにゃんの実家のおうちには丸い石油ストーブがあって実家に帰るといつもとても感動するそうだ。
夢にまで見るらしい。
丸い鉄板の上にフライパンを置いて餅を焼く、卵焼きをつくる、鍋をのせておでんを食べる、あったかくて、なんだか懐かしい。
その夢にわたしは出てくる?
出てくるわけないじゃないですか。あたりまえです。
でもまあ、そんなあずにゃんのためにわたしはいっぱいバスタオルを買ってあげた。
誕生日に、つきあって何ヶ月記念に、クリスマスに、お正月に、サプライズプレゼントに、日頃の感謝に。
そんなわけでわたしたちの住むアパートの洗面台の棚の中には色とりどりのバスタオルが所狭しとつまっていて、
そこに入りきらなかったものが床の上に畳んで積み上げられ、さらにそこから崩れ落ちたタオルたちが床を覆っている。
ふわふわしてた。
そこにはありとあらゆる色、形、模様、キャラクター、質感のバスタオルがあった。
あずにゃん(と、わたし)はそこからどんなバスタオルを選ぶこともできたし、選ばないこともできた。
髪の長いあずにゃんとって、これはまさに楽園だよ!楽園、バスタオルの楽園だ!
はあ、ってあずにゃんは大きなため息をついて、言った。
お風呂上がり髪をぐじょぐじょに濡らして、憂鬱な気分で風呂場から出ながら、
個性豊かなバスタオルたちが囁きあっているのを見るとわたしはこんなふうに思わずにはいられないんですよ。
こう。
はー唯先輩はなんてばかなんだろうって。
わたしに必要なのは、たくさんのバスタオルじゃなくて、ただひとつの大きくてそれだけで髪を乾かせるようなバスタオルです。
あ!それってピンク・ビック・バスタオルのことだよね!
はあ、ってあずにゃんがため息をつくからわたしはなんとしてもピンク・ビック・バスタオルを買いに行かなければと思う。




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