過去ログ - 唯「ピンク・ビック・バスタオルを買いに」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/02/07(土) 19:17:09.43 ID:HzA0YEX8o
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そのデパートには屋上があった。
そこにはいろんなゲームがおいてある。
コインで動く豚と牛、古いプリント倶楽部、ピンボール風のゲーム、
ゲームソフトがあたったりするルーレット(ぜったいあたらないからやめたほうが言いよって子供の頃よく憂に言われた)、
それぞれにいろいろと趣向を凝らした玉入れゲーム。
風雨にさらされたせいだろうか、どのゲーム台もさび付いて、いまにも壊れそうだった。
もし、バスタオル探しに行ったデパートに屋上があったなら、わたしはいつも屋上でゲームをすることにしている。
どのゲームも単純な仕組みの子供だましのようなものだったけど、これがやりはじめるとなかなか熱中する。
スロットに100円をいれると、ゲーム台に明かりがともって、音が出る。
ボールが飛び出て、たくさんの障害物にあたりながら左上のスコアがだんだんと増えていく。
左右のフリッパーをあげさげしてひたすらボールを跳ね返す。
たいていは屋上に人はあんまりいない。
ときどき、子供連れの家族なんかで賑わっているときなんかは、
なんだかひとりでゲームをやっているのが恥ずかしくなってきて、
そういうときは自動販売機の横のベンチに座って休んでいる。
自動販売機で買ったサイダーを飲む。
炭酸が苦い。
ベンチに座りながらくだらないことを考える。
夜のデパートの屋上のことなんかを。
真夜中、ぱちぱちという火花の散るような音のあと、屋上が息を吹き返す。
誰もいないデパートの屋上で、ぴかぴか、ぱちぱちと派手な音がする。
ゲームたちの電源ランプがいっせいに光る。
機械の猿や牛や豚が動き出す。
ぱっぱらぱららー。
ぱっぱらぱららー。
コインをいれてね。コインをいれてね。
ひとりでにピンボールの玉が飛び出して、あっちへいったり、こっちへいったり。
ばしっ、ばしっ。
ぱっぱらぱららー。
屋上はあかりを灯して、誰かを待っている。
たとえば、夜に空を飛ぶ誰か。
アパートの窓から飛び立ったあずにゃんはぴかぴか騒ぎ立てるデパートの屋上にやってきて、
ポケットにあふれんばかりにつめた100円玉をゲーム台の上にじゃらじゃらと置いて、スリットに100円玉を滑り込ませる。
ぱっぱらぱららー。
ぱっぱらぱららー。
ゲームがはじまって、あずにゃんはわたしの叩き出したハイスコアを目の前にして、コインを入れ続ける。
いつまでも。
そんなことを考えていると、もう夕暮れだった。
手元のゲーム台はまだ動いていて、もう少しで、ハイスコアに到達するところだった。
左上のスコア表示が点滅している。
ぴかぴか、ぴかぴか。
惜しいとは思うけど、でも今帰らなきゃ電車に間に合わないしなあ。
結局ゲームは諦めて、家に帰った。
電車の中では晩ごはんのことを考えていた。
晩ごはんはいつもわたしがつくるのだった。
あずにゃんはわたしが帰る頃にたいてい起きてくるから
それはあずにゃんからすれば朝ごはんなのであんまりヘビーなものをつくると食べにくいだろうなあとか
ふたりでいる一番の時間だからならべく話題になるものを作ろうとかそういうことを考える。
だけど当のあずにゃんはなにを食べてもおいしいおいしいとしか言わないので、ちょっと張り合いがないのだ。
料理のうでだって、毎日そうしているのだから上達しているはずなんだけど、
やっぱりあずにゃんはおいしいしか言わないので、よくわからない。
玄関の扉をあけると、リビングには寝ぼけ眼のあずにゃんが待っていて、わたしたちはこう言う、こう。
ただいま!
おはようございます。
わたしは晩ごはんの支度をして、あずにゃんはテレビを見てた。
そんなふうにして週末は過ぎ、あずにゃんは夜に空に浮かび、わたしは眠っている。
朝に起きると、あずにゃんが帰ってきていて、わたしのために朝ごはんを作って待っている。
あずにゃんの料理は一向にうまくならないし、やっぱりなにを食べても相変わらずおいしいおいしいと言っている。
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