過去ログ - 影の薄い男の話
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1:名無しNIPPER
2015/02/15(日) 16:05:54.57 ID:GZoym6z40
「誰もいない森で倒れた木の音は存在しない、なんていうのは
せっかく倒れた木にたいして失礼だと思うんですよ」

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2:名無しNIPPER
2015/02/15(日) 16:06:42.27 ID:GZoym6z40
ぼくは、いままで影の薄い人生を歩んできた
でも、まさか本当に影が薄くなるとは、思ってもみなかったよ

これは彼女の意見なのだが、「影が薄い」という言葉自体、ぼくを含むこっち側の人達が、きみ達あっち側の人達へと伝えることが出来た
たった一つの言葉なんじゃないかと思う。


3:名無しNIPPER
2015/02/15(日) 16:07:43.56 ID:GZoym6z40
あなたの周りにも一人はいるだろう。彼は、無視されている訳ではないんだ
でも、物事は彼抜きで進むし、誰も彼の為に立ち止まりはしないし、気付くと彼とは音信不通になっている

そんな人が。

以下略



4:名無しNIPPER
2015/02/15(日) 16:08:55.55 ID:GZoym6z40
さて、ぼくはこれが、ぼく自身を含めて誰にも読まれないことを確信している
その理由は後で話そう
ではなんでこんなことを書いているのかと言えば、まぁ、諦めきれないからだ。

死んだら焼いてくれと言いながら日記を書くひとを想像すれば分かりやすいかな
以下略



5:名無しNIPPER[sage]
2015/02/15(日) 21:14:27.46 ID:S+F1Gmb0O
期待


6:名無しNIPPER
2015/02/15(日) 22:38:12.69 ID:3GJ+3PHVO
そもそもの始まりはたしか大学3年生の夏休みだったと思う
その頃のぼくは、勉強しか得意なことの無い、地味な学生だった
趣味は読書、サークルも部活も奉仕活動も何もせず、アルバイトと奨学金で学費を払って築10年過ぎのアパートで一人暮らしをしている、どこにでもいる大学生のひとり
ちなみにバイト先は電車で20分の海の近くにあるオンボロの学習塾で、好きな本の種類はすでに死んだ人が書いた小説だ


7:名無しNIPPER
2015/02/15(日) 22:38:54.94 ID:nB8yD1t7O
お酒に弱いのと、いつもアルバイトをしてること、
それにあまり喋るのが得意じゃないことで、一年生の頃はそれなりにいた友人も潮が引く様に消えていった


8:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 02:11:07.40 ID:ZtNOCoYAO
これはいい訳なんだけど、ぼくは喋るのは嫌いじゃない
だけどぼくは、どんなことでも、たとえそれが今日は暑いねの一言だとしても、
それを言ったら相手はどう思うだろうかとか、そういうのがどうしても気になってしまうんだ

だからぼくが満を持して口をひらく頃にはもう話題は3つくらい先へすすんでいて、
以下略



9:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 02:11:40.71 ID:fDDPGuy6O
だけどそのお陰か、バイト先の塾ではぼくはそれなりに人気の先生だった
だって勉強は嫌いじゃないし、あらかじめ喋る内容を幾らでも考えられるからね

最初はいやいや始めたバイトだったけれど、慣れると生徒を笑わせる方法も分かってきてさ。
成績が上がったって感謝されるのも悪くなかったし、たまに旅行のお土産なんか貰ったりして
以下略



10:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 02:12:58.31 ID:fDDPGuy6O
こうしてぼくは八月半ばにして、この夏休み、
アルバイト先とスーパーのおばちゃんを除けば誰とも会話をしていないことに気付いたんだ

彼女に言わせると、こういう会話の不在ってやつが初めの段階らしい

以下略



11:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 18:52:37.82 ID:DHign45f0
生徒がぼくを無視するんだよ
出席簿をもって教室に入っても、みんなケータイをいじったり、雑誌をめくったり、おしゃべりに興じたままで
まるでぼくなんかいないみたいにさ


12:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 18:53:14.72 ID:DHign45f0
最初は、やっちゃったかなぁと思ったよ
同じ様なことが前に一回あったんだ。まだバイトを始めたばかりで、叱り方とか怒り方なんて知らなかった時、
教室があまりに騒がしかったから、ぼくはほとんどどなるような調子で生徒たちを注意した。
それが気に食わなかったんだろうね、次の授業から生徒はみんな下を向いて黙ったまま
あれは見事なサボタージュだった。
以下略



13:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 18:53:54.56 ID:DHign45f0
だけど、それがどうやら違うらしい
ぼくが、おーい授業はじめるぞーと少し大きな声をだすとみんなは普段通りに席に着いた
反抗的なところなんてこれっぽっちもない。むしろいつもより元気がいいくらいだ
思い返せば、このクラスで反感を買われるようなことをした覚えもなかった


14:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 18:54:29.08 ID:DHign45f0
その時は少しフシギだなぁくらいに思ってたんだけど、
これが、その日入っていた13コマの授業、全部のクラスで続いたんだ。
ぼくが声をあげたときの、少しびっくりしたような生徒の目線までそっくり同じ。

からかわれているのかとも思ったけど、
以下略



15:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 18:55:02.65 ID:DHign45f0
次の日は、ちょうど盆休み前最後の出勤日だった

その日の仕事は模擬テストの試験監督
やることは「始め」、「そこまで」という二単語を大きな声で言うことと、
テスト用紙を配ったり回収したりするだけ
以下略



16:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 18:56:24.56 ID:DHign45f0
店員さんが、ぼくを露骨に無視するんだよ

しかも店員さんだけじゃなく、店のお客さんまでそうなんだ。なんかもう笑えてきたね
だって、私は真面目ですって顔に大書きされているような、
勉強道具を抱えた制服姿の女の子がぼくの前に割り込んで来るんだもの
以下略



17:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 18:56:58.91 ID:DHign45f0
結局コーヒーは諦めて、もう今日はとっとと帰って本でも読もうと思ったんだ。
もう誰かに無視されたり、驚きの目で凝視されるのはうんざりだったしね。


18:名無しNIPPER
2015/02/16(月) 19:18:00.53 ID:DHign45f0
それで、駅についたとき、ついに見つけてしまったんだ。

隣の人の影より、ぼくの影の方が、どう見ても薄いことを


19:名無しNIPPER[sage]
2015/02/16(月) 23:07:08.86 ID:7S5mazXuO
なんか化物語っぽいな


20:名無しNIPPER
2015/02/17(火) 23:24:08.66 ID:bx93AWg00
あたりは丁度5時の夕日に照らされて、影が長く伸びてるからそんなことに気づいたんだろう。
最初は、目の錯覚を疑った。だから、しっかり目をつぶってみた。

目を開く。何も変わらない。もう一回だ。


21:名無しNIPPER
2015/02/17(火) 23:24:38.86 ID:bx93AWg00
やっぱり変わらない。
隣に立っている人を観察してみる。
その人はスタジアムジャンパーに野球帽をかぶった若い男で、にもかかわらず、
この男は絶対野球が好きではないんだろうな、と思わせる雰囲気があった。
つまり、特に変わったところの無い普通の人だった。
以下略



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