過去ログ - 「お前はドライブが嫌いだったよな」
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35: ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2015/02/20(金) 00:24:27.53 ID:OHZk4XxVo

 火葬の準備には時間がかかるらしく、残された僅かな時間という言葉が浮かび、同時に吐き捨てた。
もう時間などとうに無くなっていたのだ。


 しかし、それでも俺は彼女と一緒にいることにした。


 車の助手席、カスミソウに満たされた箱の中で、彼女はこの上なく安らかな眠りについていた。
もう一年以上彼女は安らかに眠ったことなど無かった。
それが原因で彼女はこうなっているというのに、その寝顔ともいえる死に顔を愛おしくすら思えた。


 首輪の後がくっきり残った彼女の首筋を見つめて、黙って、物音も立てずに一時間くらいそうして過ごした。
彼女は少しの物音で起きるから、彼女が寝ている時はそうするのが癖になっていたからだろうか。
突如、窓からノック音が鳴り響き、心音が高まった。


「お待たせいたしました、準備が整いましたので移動をお願いいたします」


 パワーウィンドを下げると、人のよさそうな中年の職員がそう言う。
ずいぶんこちらを探したのだろう、彼は息が上がっていた。行き先を告げないとは失礼をしてしまった。


「いえ、かまいません。誘導いたしますので、お気をつけて運転なさってください」


 そう一礼し、彼は息も休まらぬうちに駆け出す。その様子に頭が下る。
ふと、気が付く、そういえば何故か車番を聞かれた、それはこういうことかと納得した。
つくづく頭が下る。




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