過去ログ - 【艦これSS】提督「壊れた艦娘と過ごす日々」08【安価】
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857: ◆oeBS4v7bwY[saga sage]
2015/03/04(水) 00:42:43.04 ID:Fsi/XqZ2o

睦月「思ったんですけど」

 こほん、と咳払いをして、睦月が話す。

 出来ればどいてからにして欲しかったのだが、ふざけた様子の抜けた表情を見て、その言葉を引っ込める。

睦月「提督って、そう言うのが多い気がするのです」

提督「……と、言うと」

睦月「ですから、あれも駄目だとか、これも駄目だとか、そういうのです」

睦月「今のこれは抜きにしても、何だかいつも自分を縛ってるみたいですよ」

提督「……」

 少しだけ湿った睦月の声。

 身を起こし、床にぺたんと座ったまま、睦月が続けた。

睦月「提督。笑ったり怒ったり、悲しんだり、しないですよね」

 心配したような、小さな呟き。

 それが嫌に胸の中でこだまする。

睦月「提督のおかげで、睦月は今、ちゃんと笑ってます。笑えるようになりました」

 笑うだけしか出来なかった睦月だが、今言っている睦月の“笑う”とは、本当の意味での言葉だろう。

 少なくとも、以前のような、仮面のように貼り付けたようなものではなく、心の内からそう思えるような。

 楽しいと言う感情や嬉しいと言う感情を、淀みなく映す為の笑顔。

 それを睦月は取り戻した。

 そして睦月が問い正した。

睦月「笑うしか出来なかった睦月もきっと、傍から見たら酷かったでしょうけど。でも、笑う事もできない提督は、それよりもっと……もっと、酷いですよ」

 そっと、睦月が指を伸ばす。

睦月「過去の事を後悔するのは大事です。それは提督にしか出来ません」

睦月「でも、それで提督が壊れてしまったら。それはきっと、亡くなった子達だって、哀しいんですよ」

 いつだって、記憶の薄皮一枚隔てた先に、大和達がいる。

 海を見たって、陸を見たって、外に出たって。

 どこにだって、過去がある。

睦月「提督。今の提督の前に、もし亡くなった子達が現れたとして。ちゃんと向き合って、弔えますか?」

提督「……」

 答えは出なかった。

 肯定は出来なかった。

睦月「ただ弔うだけじゃあ、駄目なんです。ちゃんと、亡くなった子達にそれまで向けていた様な、お別れする前のあなたでなくちゃ、駄目なんです」

 後悔の念、自責の念。

 一日たりとも、それから離れた日はない。

 そしてそう自分を戒め続ける事で、気がついたら今の自分になっていた。 

睦月「心が死んでたら、駄目なんです。生きて、弔うんです」




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