過去ログ - パンが食べたかった女の子の話
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8:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:42:44.45 ID:OtqEarQg0
「驚いたな」
「何がだい?」
「あまり君たちには詳しくないからわからないが、普通こんな話信じないだろう」
「信じるよ」
「なんで?」
以下略



9:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:43:21.22 ID:OtqEarQg0
こんな感じで、青年と女の子の同居が始まりました。
二人でパンを作ったり、木に水を上げたり、町のヒト達は「変人が二人になった」と、
少しだけあきれたやさしい目で二人を眺めていました。
いままで一人だった二人は案外簡単に二人きりの雰囲気に慣れました。
青年は、少しだけ窮屈になった家が、とても幸せな空間に感じていました、それは、女の子も一緒です。


10:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:43:58.37 ID:OtqEarQg0
同居を始めてから3か月とちょっとが過ぎたある日、青年はご馳走を作っていました。
二人が出会ってから100日たったので、お祝いのためのご馳走をたくさん作りました。
ほかほかのパンとジューシーな七面鳥、ボウルいっぱいのババロアに女の子の大好き
なアップルパイ、とにかくたくさん作りました。
二人きりじゃ食べきれないくらい
以下略



11:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:44:40.36 ID:OtqEarQg0
このころから女の子は、時折何かを考えるかのような表情をするようになりました。

青年が心配して理由を聞いても女の子は答えず、なんとなく曖昧な返事でごまかされました。
そのうちに青年は、「詮索してはいけない事情があるんだろう」と思い、いつも通りの態度で接するようになりました。


12:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:45:17.10 ID:OtqEarQg0
ある日、青年が目を覚ますと、女の子のベッドはからっぽでした。あわてて探しに出かけようと準備していると、
テーブルの上に手紙が置いてあることに気づきました。


「しばらくのあいだせわになった
以下略



13:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:45:44.85 ID:OtqEarQg0
「どこで字を覚えたんだろうなあ」
そう言って青年は少しだけ涙を流しました、大泣きしてしまえば、女の子に笑われる
と思ったからでしょうか。それでも、涙だけは止まりませんでした。


14:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:46:25.99 ID:OtqEarQg0
女の子がいなくなってからの青年は、別に大きく変わりませんでした、
魂が抜けて仕事が手につかないわけでもなく、いない少女の影を追いかけるわけでもなく、
ただ普通の青年に戻っていました。



15:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:46:53.89 ID:OtqEarQg0
それから一年後


16:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:47:44.22 ID:OtqEarQg0
青年は元気でした、日課の木の水やりを欠かさず行い、それなりにお客が増えたパン屋でせかせかと働き、
毎日をまあまあ楽しく生きてきました。
それでも時折、木を見て女の子との毎日を思い出し、切なくなりました。


17:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:48:15.60 ID:OtqEarQg0
やがて、木に実がなりました、木の周りには、たくさんの動物が集まりました。
青年に見せるには少し、時間がかかりすぎてしまったみたいです。
女の子は少しだけさみしそうな顔をして、呟きました。
「なんだかパンが食べたいなあ、ふわふわのあまあいパンが」
誰も、それには答えませんでした。


18:名無しNIPPER
2015/02/18(水) 22:48:43.51 ID:OtqEarQg0
また、少女は眠りました、今度は目覚めないように、しっかりと寝床に鍵をかけて。


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