29:名無しNIPPER[saga]
2015/02/23(月) 16:00:05.79 ID:zW0LuoBg0
「昔も、こんな感じだったな」
手を差し伸べたまま、彼が言葉を紡ぐ。
「いちいち机の下にこもっているお前を『さん、に、いち』で引っ張り上げてたんだ、覚えているだろ?」
それなら、覚えてる。
だってそれは私達の日常だったから。
レッスンやお仕事が来るまで机の下にこもっている私を、彼が外に出してくれるんだ。
机の下にいれば彼はずっと側にいてくれるし、彼が何処かへ出かけようとする時に立ち上がればすぐ分かる。ついていくことができる。
そう、いつだって私は彼の側をついてまわるだけだった。
勿論、レッスンや仕事の関係上、全部が全部一緒ってわけではなかったけど、可能な限りはずっと。
「今でも皆からの連絡はたまに来るんだ」
彼はポツリポツリと話しだす。昔と違う、今の話。
あの子はデザイナーを目指して絵の専門学校に通っているとか、アメリカに留学して研究者の道を選んだとか。
そこには私も知っている話もあったし、知らなかった話もあった。
でも、その中に一人も、アイドルを続けている人はいない。
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