5:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 23:24:46.26 ID:Kw3uxajN0
またしばらく時間を置いて訪ねなおそう、それかエレベーターの前で待っとくのもありか。
そんなことを考えながら、逃げるようにドアノブを握ろうとしたその瞬間、勝手にドアが開いた。
掴もうとしたものが目の前から遠ざかり手は空を切る、その勢いで私はバランスを崩してしまう。
咄嗟に縁に手を引っ掛けようとしたが間に合わない。
時間にすれば数瞬の出来事なはずのに思考だけはずっと早くに伝わってきて。
い、痛いかな、痛くないといいんだが。
そう祈ってももうどうしようもない。私は覚悟して目を瞑る。
けれど、いつまで経っても痛みはこなかった。
代わりに感じたのは柔らかい衝撃、そして、私がぶつかったくらいではびくともしない力強さ。
それが人だと気づいた時には、その人に体重を預けるようにしていた私は、腰に手を回されぎゅっと腕の中に引っ張られた。
……タバコの香りと、慣れ親しんだあの匂い。
顔を見なくたって、もう私には誰が抱き留めてくれたのか分かる。
「おっと……輝子、もう来てたのか」
「……うん、来てたぞ」
相手の胸に顔を少しうずめる。
タバコの匂いが彼を覆い隠しているようで、この匂いはやっぱり、好きになれないな。
42Res/32.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。