過去ログ - 阿良々木暦「えりハーミット」
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10: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/02/25(水) 20:49:23.19 ID:DLa1I0Qh0

「…………?」

それは傍から見たら滑稽な絵図だったと思う。
なんせ、わたしの胸に少女の手がめり込んでいる。
べき、ごき、と体内から鈍く響く生理的に嫌悪される音は、彼女がわたしの胸の中で肋骨を掻き分けているのだろう。

「水谷!」

「絵理ちゃん!」

こほ、と反射で出た咳と共に、大量の血液が外へと出て行く感触を味わう。
肺に肋骨が刺さったらしい。
あれだけ胸の中をいじられたら、当たり前だよね。

ああ、血を失くすって結構寒いんだな、なんて場違いな感想が浮かぶ。
涼さんと愛ちゃん、そして阿良々木さんに逃げて、と言おうとするものの、喉から出るのはひゅうひゅうと鳴る呼吸だけだった。

「あった」

ぼそり、と斧乃木ちゃんが、何かを呟く。まだちゃんと耳が聞こえていること自体が不思議で仕方ない。
人間の身体はわたしのような引きこもりの健康不良児でも中々丈夫に出来ているみたいだ。

ああ、もう。
苦しいのは辛いから、早く死んでくれないかな。
わたしの願いが通じたのか、斧乃木ちゃんがわたしの胸から手を引き出す。
ぶちぶちと嫌な音を立てた後、斧乃木ちゃんの真っ赤な手の上に収まっていたのは、わたしの心臓なんだろう。
自分の心臓をこの目で見て死ねる人間なんて、そうはいないと思う。
それにしても、意外に小さいね、わたしの心臓。
これじゃあ勇気も度胸もなくて当たり前?

「■■さん!」

「何■■■だ、■めえ■■■えぇぇぇぇぇ!」

薄れて行く意識の中で、愛ちゃんの悲痛な叫びと、阿良々木さんがとても人間とは思えない程の慟哭を上げながら斧乃木ちゃんに掴みかかっているところを視界の端に捉える。

「落■■てよ、■■■ゃん」

「■■けるな! 水谷が■■■■■っ■■■■だ!」

ああ、今回もまたダメだった。

それじゃあ、やり直そうか。

かたん、かたん、

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かたん。



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