19: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/02/25(水) 21:02:52.21 ID:DLa1I0Qh0
007
「それがお前の本音なのか、水谷」
囁くその声は、予想外にも優しかった。阿良々木さんがどんな立ち位置で、何を目的にこの世界にやって来たのかは目下わからないけれど、そんなに悪い人には思えなかった。
そうだ。
涼さんを、愛ちゃんを、助けるため。
それが繰り返しのきっかけだったことだけは、事実。
はじめは、何とかなると思った。
今まで大抵のことは何とかなったし、みんなを巻き込んで繰り返しを続ければ、最悪、現状だけは維持できる。
それに何回も繰り返せば一回くらい成功するんじゃないか、なんて思っていた。
でも、次第にどうしようもない壁に至る。
涼さんは呼吸もままならなくなる程に衰弱し、愛ちゃんは大震災もかくやと天災を巻き起こした。
気付いた時にはもう手遅れで、わたしのこの異能をもってしても、手には負えなくなっていた。
弱音を吐いていいのならば、悪意しかない世界に、もう疲れたんだ。
人間関係を築くのはとてつもなく難しいのに対して、崩壊は一瞬。
だから積み上げた。
崩れないように、壊さないように、丁寧にひとつひとつ。
けれどそれも、ほんの些細な事で壊れる可能性を孕んでいることに変わりはない。
それは死別だったり、意見の食い違いによる離縁だったり、そうでなくとも一身上の事情による離別かも知れない。
出会いがあれば別れもある。
そんな事は物心ついた頃から百も承知だけど、だからと言って許容できる事じゃない。
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