24: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/02/25(水) 21:12:24.75 ID:DLa1I0Qh0
「涼、さん……?」
「絵理ちゃん……良かった……!」
涙を浮かべ、力いっぱい抱きついてくる。
疑問と驚愕の入り混じった複雑な感情が渦巻き、答えを探す。
だけど、結論は出ない。
「涼さん……どうして……?」
何故こんな場所に涼さんがいるのかもわからなければ、動けていること自体、不思議。涼さんは衰弱の果てに、今日という日が終わる瞬間、命を落とす。
そのはずだった。
だからこそ、こうやって明日が来ないようにしていたのに。
「もういいんだよ、絵理ちゃん」
「え……?」
「涼と日高の一件はもう大丈夫だ。だから、お前はもう無理をしなくてもいいんだ、水谷」
その言葉を、何年も待ち続けた。
「お前がずっと止めてくれていたから、みんな悪化せずに無事に済んだ。お前のお蔭だ、水谷」
努力は、総じて報われないことをわたしは知っている。
努力して願い続ければ夢は叶うなんていうのは、一部の人に限定した建前。
本当は、その裏で何倍、何十倍、何百倍という数の夢が果てては消えている。
「もう……誰もいなくならない?」
「うん」
わたしは、とても幸運な方。
でも、だからこそ、手に入れたものを失いたくなかった。
「また……みんなでアイドルできる?」
「うん」
それがどんな歪な方法でも。
失うことが、何より怖かったから。
「わたし……もう、泣かなくても、いい?」
「うん」
思わず、涙が出た。
その一粒一粒には、様々な名前がついていたのだと思う。
後悔、懺悔、悔悟、猜疑、諦観、数え出せばきりがない。
毎日のように、泣いていた。
こんな異常な環境で踏ん張って前に進めるほど、わたしは強くない。
辛うじてわたしを繋ぎとめていたのは、涼さんと愛ちゃんの存在、そしてわたしの中の黒い闇。
誰にも知られたくなかった、わたしの本音。
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