3: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/02/25(水) 20:38:26.54 ID:DLa1I0Qh0
001
その起動の唸り声は、心臓を動かす胎動の合図。
その駆動の音は、血液の流れる音に酷似していて好ましい。
その打鍵の無機質な響きは、彼等との会話のようで心が弾む。
その15.6インチのディスプレイに映るのは、顔のない人々の声。
そこには年齢も性別も国籍すらも問われない、自由な世界がある。
一般的にインターネットと呼ばれる、プロトコルによりコンピュータ間を繋ぐネットワークによって形作られた仮想世界。
かつては物理的に手を出せない空間として、機密データを保管する為にごく限られた一部の人間が利用する目的で作られたと聞くけれど、それも今は過去の話。
現在では人類の大半が有用なツールとして何らかの形で使用している。
ここは人の意志が介入していながら、誰が定めた訳でもない独自のルールと秩序によって保たれている、不思議な世界だ。
悪意や憎悪といった負の感情も、現世とは比べものにならないレベルで蔓延しているけれど、大抵は常識のある住人たちによって排除もしくは無視される。
それに何も、悪口や罵詈雑言が悪意だけとは限らないのもこの世界の特徴だ。
顔のない彼等は、本音を隠す必要がない。
人間同士のやり取りで良く見られる、おべっかや上っ面だけの褒め言葉を彼等は使わない。
だから、人の本音を垣間見ることの出来る貴重な世界とも言える。
褒めるだけでは人間性は成長しない。
わたしの動画も、アップしていく過程で多くの声援と共に送られてきた指摘や、時には辛辣な言葉を受けて成長して来た。
いかがわしい人間が集うのがネット社会、と言う人もいるけれど、わたしは違うと思う。
確かにそういう人もいる。
けれど、わたしのように、人と対するのが苦手な人間がディスプレイを通して本音を語れる場所でもあるのだ。
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