過去ログ - 阿良々木暦「えりハーミット」
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6: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/02/25(水) 20:43:24.53 ID:DLa1I0Qh0

「よう水谷、おはよう」

「…………?」

思わぬ首を傾げてしまったのは、見知らぬ人が事務所にいたからだ。

しかもわたしの名前を知っている。
アイドルだから顔を知られていて当然、と思う程にわたしは自惚れてはいない……と思う。

どちら様だろう。
わたしに対し親しげに歯を見せ、手を上げて挨拶をしてくるその様は、まるで十年来の付き合いがある友人のするそれのようだった。
だけど、わたしの記憶を探っても、こんなロン毛でアホ毛が立っている、リュックサックを背負ったツインテールの小学生を追い回してセクハラしていそうな男の人は見覚えがない。

どこかで一度会ったことがあるのだろうか。それにしては、馴れ馴れしすぎるけれど……。
万が一彼が芸能界のとても偉い人、という可能性だってあるにはある(年齢的に、そうは見えないけれど)。
それ以前に、挨拶されたからには返すのが、社会の常識。

「……おはよう、ございます?」

「……なんで疑問形なんだ」

呆れるように目を細める彼。悪い人には、見えない?
あと語尾が疑問形になってしまうのはわたしの昔からの癖。

「どちら様……ですか?」

「……それは水谷なりの冗談か?」

日高ならともかく水谷にやられるとちょっと傷付くんだけど、と悲しそうに眉を顰める阿良々木さん。

かたん、と打鍵の音が頭に響く。

……ああ、そうだ。
阿良々木さん。わたしをスカウトし、リアルアイドルの世界へと誘導した、阿良々木暦プロデューサーさん。

「冗談です……阿良々木さん」

「僕のガラスのハートを傷つけたら強制的癒しという形で責任を取ってもらうぞ」

そんな、皮肉なのか事実なのか微妙なラインの発言と共に笑う阿良々木さん。こういう冗談を言う人は私の周りにいなかったから、中々に、新鮮?
涼さんと夢子さんは真面目だし、愛ちゃんは天然だから。

「…………具体的には?」

「膝枕待ったなしだ!」

「それは……ちょっと」

「アイドルに膝枕されながら子守唄を聞くのが僕の長年の夢だったんだ」

「ちなみに曲目は?」

「DOKIDOKIリズムがいいな。是非水谷に歌ってもらいたい」

「無理?」

わたしにあんな超ハイテンション曲が似合う訳がない。
愛ちゃんも言っていたが、曲にはイメージがある。
歌い手によって曲の魅力はそれこそ千差万別に変化する。
しかも子守唄としてのチョイスじゃない。
でもあの曲、すごくかわいいよね。

「恋愛サーキュレーションでもいいぞ」

「それ以上は、だめ」

世界観ごとふっ飛ばしている気がしたけれど、たぶん気のせい。



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