過去ログ - 夜更けの影送り 百合ver
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41: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/03/24(火) 19:15:42.60 ID:m0u5what0
一日に一便しかない帰りの船で、私は懐かしい人物に再会した。
最後に会ったのは、二年程前だ。
その歳月は、若者にとっては成長の二年だが、老人にとっては老いの二年だった。

「おばあ!」

私は駆け寄って、抱きすくめる。
線香みたいな辛気臭い匂い。
おばあの匂いだ。

「ちーちゃん、変わらないねえ」

「おばあ、なんかちっさくなってない?」

腰がややお辞儀してしまっているというか。

「おさぼりしよる間に、ねえ」

しわがれた皮膚が幾重にも線を作る。
申し訳なさそうに、笑う。
そして、私を支えのようにして両腕を掴んでくる。

「ちゃんと歩いてって言ったじゃん」

「なかなかねえ。静人さんが危ない言うんで、迷惑もかけられんし」

のどが詰まる。
その名をまた耳にする時が来るなんて。
シズト――かやの夫の名。
不快にしかならなかった。

「あの」

ゆきがおずおずと口を開いた。

「あ、ごめん。実家の近所に住んでるおばあちゃん」

「そうなんですね」

「かやちゃんが、お世話になってます」

さらに深くお辞儀する。
後頭部が見えた。
真っ白い針金みたいな髪の生え際が、少しだけ薄くなっている。

「おばあ、お世話してるの私ね」

「あら、偉くなったんねえ」

「偉いわけじゃないけど」

「頑張って」

ゆきの手をガサガサの手で掴んで、ぎゅうっと握った。
おにぎりでも握る様に。




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