45: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/03/24(火) 20:51:15.39 ID:m0u5what0
その日は、おばあをマンションに残して少し遅めに出社した。
夕方までには帰ってくる。それから一緒にお墓参りに行く、という約束をした。
久しぶりに食べるおばあの朝ごはんは、野菜がふんだんに使われていた。
量も多く、一人では食べきれなかったのでお昼の弁当ももたされた。
実のところ、夢でも見ているのではと思ったが、みそ汁に入っていた煮干しの骨が喉に当たって痛かったので、
それはないという結論に至った。出汁を取りふやけた煮干し入り味噌汁を最初に食べさせてもらったのは小学校の時だったっけ。
オフィスで喉元をさすりながら、昔だったら煮干しだけ残していたなあとぼんやり思い出していた。
と、思い出に浸っている場合ではない。
さっさと仕事を片付けないと、夕方までに帰れない。
待ちくたびれたおばあが家を抜け出して、一人徘徊し始めて――帰らぬ人に。
という所まで想像してぞっとして、斎藤マネージャーがメールに添付してくれた昨日の出席者全員の報告書に目を通していく。
昼休憩も挟まずにぶっ通しで業務を終え、暇そうな課長に飲みに行こうとかふざけたことを言われて邪魔されながら帰宅した。
ドアを開けると、イキイキとした顔でおばあがクレンザーを片手に台所を磨いていた。
「な、何してんの?」
「タダで泊めてもらっとるからね。ちょっと綺麗にしといたよ。ああ、物はなんちゃ動かしてないから安心し。さ、ご飯にしようか」
もはや勝手知ったる他人の家を地でいくおばあに、私は可笑しくて小さく笑った。
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