過去ログ - 夜更けの影送り 百合ver
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9: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/03/08(日) 12:35:20.18 ID:1QR5mBl70
転がるように、印刷室から飛び出していく。
どうせ、15分はかかるだろう。
相変わらず、どこか抜けている。

「……はあ」

今回の視察先の店舗は、初期はうなぎ登りで、現在は右肩下がり。
よくある話し。今までは、真新しさがあった。
まあ、それに胡坐をかいていたのだろう。

場所は、瀬戸内海を挟んだ向こう側だ。
本社のある福岡から船が出ている。
一度だけ行ったことがある。
この会社に就職する前。
まだ、長崎の実家にいた時。

最愛の人の幸せを祈って。
祝福をしに。
あの時は、おばあと一緒にいったっけ。
船と共に飛行するウミネコに、恐る恐るポップコーンを投げつけた。
懐かしい記憶が蘇る。
今は、おばあは向こうで暮らしている。

のんびりして居心地の良い街だった。
車を持っていないあの人にとって、
地方を結ぶ鉄道や路面電車は便利だったかもしれない。
長崎に少し似ていた。
同じ島国だからか。
だから、彼女は不安を口にすることなく行ってしまったのか。
穏やかな春の陽気に包まれながら。
友人や親類の拍手を浴びながら。

私の最愛の人――かやは、ちょうど2年前の春に結婚して長崎の街を出て行った。



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