15:名無しNIPPER[saga]
2015/05/10(日) 13:02:39.08 ID:SshG4AoZ0
途端に心臓が早鐘を打った。
自分の番はまだまだ先だが、どうしたことだろう、この緊張は。
昨日まではもう主演になった気でいたのに。
よく眠れたのに。
割れた鏡で見た自分の姿が、急に田舎っぽく、せせこましい誂えに見えてきた。
他の猫を見やった。
でっぷりと太ったご主人に抱えられ、今日の為にぱりっとノリをきかせた燕尾服。
おろしたての靴はピカピカガラスみたいに光っていて、自慢のひげはピンと立っていた。
自分はどうだろうか、古臭いデザインの蝶ネクタイと、ゴミ置き場で拾ってきたボロ長靴。
既に負けているような気がして、思わず下を向いた。
「へっ、何だいあの田舎猫、もう丸くなってるぜ」
「きっと勝負する気なかったんだな」
「ちょっとかわいそうよ、タダでお芝居見れるって意気込んできたのかもしれないじゃない」
「はは、お前が一番ひでぇじゃねぇか!」
そんな声に、耳を塞ぎたくなった。
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