過去ログ - 神さま「すっげーいらない能力をあげる」
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617:名無しNIPPER[saga]
2015/08/06(木) 14:29:52.56 ID:4e4kKYat0


そして誰もいなくなった。

男が開けた深い深い『下り階段』の傍で、女が膝をついて泣いていた。

もう落ちていった二人など見えるはずもない。


堰を切ったように溢れていた涙もとうに枯れ、喉を切り裂くヒイヒイと言う音が風に流されていた。


神さま「おめでとう」


唐突に声がした。

声の主はすぐに分かったが、全力で無視した。


神さま「20の能力者を一つの町に解き放った『要らない能力』の戦い。生き残ったのは君だよ、おめでとう」

        ライトラ
神さま「『右を向かせる力』」


神さま「ランクも普通、能力も大して役に立ちゃしない。それでも生き残ったのは君で、願いを叶える権利を貰ったのも君だ」


神さま「果たして、『要らない能力』を貰った君が望むものは何だ?」


神さま「……」


神さま「へえ、そう。一度は皆、こういう能力でもいいから欲しいって言うんだけどね、最後は結局そうなるのか」


神さま「これで神さまのかわいい能力たちは本当に要らない能力だったと証明された訳だよ、まったく、あーあ」


神さま「じゃあお望み通り、君たちを『能力を渡す前』の状態に戻すよ。せいぜい平和に生きるといいさ」


女は一度も顔を上げなかった。

願い以外は、一言さえ洩らさなかった。


神さま「ホント、こうやって能力をあげては元に戻した町がいくつあったか」


神さま「ま、良い暇つぶしにはなったよ、ありがとうありがとう。最後はあっけなかったけどね」


神さまはパン、と手を叩いた。


神さま「これで、目が覚めたら君はいつものベッドの上だ。あくび交じりに起きて、朝ごはんを食べて、制服に着替えて、気になる幼馴染と一緒に登校して、授業を受け、お昼に友達と弁当を食べて、また授業を受けて、幼馴染と帰り、ただいまを言って、部屋着に着替えて、夜ごはんを食べて、テレビを見ながらあくびを一つ。両親にお休みを言って、自分の部屋に戻って、電気を消して目を瞑り、またベッドの上で退屈な朝を迎える」


神さま「この戦いの壮絶な記憶を、欠片も残さないまま」


神さま「……」


神さま「最後まで僕を見ようともしない、か。すっかり嫌われちゃったね、ハハ」


神さま「それじゃ、バイバイ。もう会う事もないだろう」


そして全知全能の彼は、退屈そうにあくびをひとつした。


神さま「ふぁあ、さて……」


またどこかでお会いしましょう。


神さま「次はどの街にしようか」


―完―


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