過去ログ - 八神マキノ「こうなってしまったのは、貴方のせい」
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5: ◆Freege5emM[saga]
2015/03/15(日) 19:47:01.80 ID:sfNyy0dio

●04

例えば、温泉地にロケへ行った日。
アイドルとしての活動には、ビジネスかプライベートか厳密に区切れない時間もある。
ロケに行った際の休憩がその一種で、紅葉で有名な行楽地で仕事をした時は、
麗奈と、恵磨さんと、椿さんとで温泉卓球に興じたりしたわ。

集まった目的はビジネスだったけど、その時は私を含めみんなプライベートな顔を見せてたわね。

貴方と私の関係に、プライベートな属性が紛れ込んだのも、その日だった。



貴方は、湯上がりで髪をアップにしていた私に、熱心な視線を注いでいたわね。
アイドルとして髪を乾かさなければならないような場面は、今まで無かった。
あのグラビアも、水には入らなかった――水着の定義について考えさせられるわ――ものね。

『物珍しいかしら。髪を上げただけでしょう?』と言うと、
アイドルは僅かな差異で劇的に印象を変えられるものだ、と説かれた。
私もだいぶアイドルが板についてきた、と褒められてるようで、満更でもなかった。

一枚、写真を撮っていいか、と貴方に聞かれた。
仕事で使うものと思い込んで表情をよそ行きにした私を、貴方は笑って静止した。
“個人的に欲しかった”……ですって。非合理的ね。



でも、結局撮らせてあげた。
もう椿さんに撮られてたから、今更渋っても……という状況を狙われたんだもの、仕方ないわよね。

この写真集の一カットとして使えるかどうか、という何でもない写真が、
私の記憶に貴方が築いた、プライベートへ進む橋頭堡だった。



貴方が私の内心に忍んできている。
私の論理の綻びに付け入って、私の心理的抵抗を弱めて、
少しずつ着実に、私の奥に入り込んできている。いつの間にか論理の網目と同化しようとする。
私の表に出していないところに、貴方は痕跡を残し、重ねていく。

私は探る側であって、探られる側は柄じゃない……筈なのに、ね。



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