過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
1- 20
124:名無しNIPPER[saga]
2015/04/03(金) 23:07:02.91 ID:dFBcxsfeO

咲「あ、あっちの角までで大丈夫です……一人で帰れますから」

 住宅街を低速で走る自動車の車内。助手席に座る咲は、運転席の女性に告げる。

「そっか。本当に大丈夫? 万が一って事があったら困るけど……」

咲「さすがにもう目の前ですし。歩いて一分くらいのとこなら、雀力をちょっと使えば……」

「あはは……力は使わないとダメなんだ」

咲「うぅ……ご心配おかけして申し訳ないです……」

 週に一回はお世話になる間柄。それも、行き帰りの送迎付き。
 至れり尽くせりの扱いに咲は身が縮こまる思いだった。

「んーと、明日はダメなんだっけ。隣に住んでる子と夕飯食べるんだよね」

咲「はい……こちらの都合で申し訳ないのですが……」

「いいのいいの。子どもに融通きかすのが大人の甲斐性ってね。気にしないで」

咲「……」

「あ、あれ? 変な事言っちゃったかな?」

咲「い、いえ、そうじゃなくて……すごく若々しいからあんまり歳上って感じがしなくて」

咲「その……お姉ちゃんくらいかなぁって。……あ、あのすみませんっ、失礼ですよね」

 あわあわと狼狽える咲をよそに、空気が抜けるような音が運転席から上がる。
 それは、堪えきれず漏れた笑い声だった。

「ふ、ふふふふっ」

「あーもう。本当可愛いなぁ咲ちゃんってば」

「思わず食べちゃいたくなるくらい☆」

咲「あ、あの……」

「あっ、咲ちゃん気をつけてね」

「咲ちゃんって無防備だから……麻雀の強い人だからって簡単に気を許したらダメだよ」

「特に鬼みたいに麻雀の強い、アラフォーみたいなアラサーを見かけたら全力で逃げて☆」

「麻雀の将来性的にも、アッチ的にも狙われたらやばいから☆」

咲「は、はあ……」

 よくわからないけど気をつけよう。咲がそう思ったとき、車が目的地に到着した。

「それじゃ……咲ちゃん、またね」

咲「はい。今日もありがとうございました」

 深々とお辞儀して感謝の意を示す。
 車を降りて見慣れた住宅街に足を下ろすと、咲が今まで乗っていた車がこの場を離れていく。
 それを手を振って見送り、咲は住んでいるアパートに向けて短い道程を歩きだした。
 今夜はとても綺麗な半月だ。

咲「……」

 オーダーの選出の日から暫く経ってから、誰にも内緒で始めたこの習慣。臨海に入学してから懇意にしていたネリーにも明かす気はない。
 後悔は、ない。自分のしてしまった事、自分という存在が団体戦のメンバーである事を考えれば、悩むべくもない。
 願わくば。自分が座る椅子に本来座るはずだった人の望みを叶えられるように。
 自分を磨き抜き、そして圧倒的な力を全国で示す。
 そのためのこの上ない協力者も得た。
 迷いは、なかった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/901.97 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice