過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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880: ◆JzBFpWM762[saga]
2015/12/15(火) 23:47:33.76 ID:Y8k0m8hzo



それは部活が始まってから一時間ほどした頃のことだった。

「盗られたぁーーーーっ!!」

ハオと二人、同じ卓で日本人部員二人を相手にしていた咲の目の前で蹴破られるような勢いで入口の扉が開き、次いで絶叫するような大声が上がった。下手人はネリーだった。

今にもカンをして和了を宣言しようとしていた咲は一旦倒そうとした四枚の牌から手を離し、飛び込んできたネリーに目を向ける。

ネリーは憤懣やるかたない様子でずかずかと練習室の床を鳴らして歩く。どこに駆け込もうか見定めるように周りを見渡しながら向かった先は咲と智葉の卓が隣り合う、中ほどの場所だった。

「なんの騒ぎだ……盗られた?」

場を乱したネリーを見とがめるように険しい視線を送りながら、智葉が訊く。

対して、咲をはじめ部屋中の視線を浴びているネリーはそれを気にした様子もなく、

「手紙とお金が、盗られちゃったの! もう信じられない!」

依然として怒り心頭といった様子で捲し立てると、地団駄を踏む。

「手紙と金だ……?」

「故郷に送るエアメールと、現金書留だよ!」

やりとりを続ける智葉とネリー。

「……警察には届けたのか?」

「これから!」

ネリーはそう言うと、急に静かになって、考え込むような素振りをする。

一方、ずっとその様子から目が離せなかった咲は、

(故郷に送る手紙って手伝った手紙かな……)

盗られてしまったという手紙のことが頭にひっかかっていた。

「手紙、それと現金書留、か……金はいくらくらい被害にあったんだ?」

「……五〇万」

「……円か?」

「うん」

額面を聞いた智葉が表情を厳しくして黙り込む。一方、五〇万円という学生にはなかなか縁のない大金の話になって、周りの日本人部員たちの目の色も変わる。

「えー、五〇万だって」

「やばいね」

「そりゃあんなに騒ぎもするよ」

「うんうん」

色めき立つ部員たち。そのほとんどの声が大金を盗られたというネリーに同情的なものだった。

五〇万といえば現金書留の上限額ではないだろうか。本当に不運。

そんな声が所々で交わされて、練習室の雰囲気はネリーが入ってくる前と一変している。


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